073 ブロスタ宅にて
「おおっう…ここは…どこじゃ…?」
ベッドの上のブロスタさんが目を覚ました様だ。
「あっ!目が覚めたんですね、ウチのアイギスちゃんがすみませんでした」
「サクヤ、謝る必要は無い、私は正義を執行しただけ」
「アイギス!目が覚めたら謝るって約束したでしょ?」
俺達はアイギスの右ストレートで意識を失ったブロスタさんを自宅まで運んだ、雑貨屋の店員さんが家まで案内してくれたのだ。
「ほっほ、ここは天国かの、べっぴんさんが三人も看病してくれておる」
「すみませんブロスタさん、俺の仲間が失礼な事をしてしまいまして」
「いや、いきなり抱きついた儂が悪かったんじゃ、こんなに元気なお嬢ちゃんだとは思わなかったがのぉ」
ポリポリと頭を掻くブロスタさん、いつもあの様な事をしているのだろうか。
「私も悪かった、でも次にぺったん娘て言ったら死なす」
「なんじゃ、胸が無いのはそれはそれで魅力的ではないか…、そう言えばお前さん達は何者じゃ?儂に何か用事かの?」
「俺の名前はユイトって言います、彼女達と探し物をしながら旅をしているんですが実は…」
俺達はブロスタさんへ自己紹介をしこの辺りの神話や伝承を調べる為にブロスタさんを訪ねた事を話した。
「ふむ、この辺りの昔話のぅ、確かに幾つかその様な話を知っておるわい、どの話から話すとするかの?」
「海の神様やモンスターに関する話はありませんか?どうやら俺達の探し物はその辺りの話に関係がありそうなんです」
「そうじゃなぁ…それなら海竜様の話がいいかもしれんな」
「海竜様ですか?私が街の図書館で読んだ本では見かけなかった言葉です」
アイギスの顔を見るが心当たりは無さそうだ、ブロスタさんを訪ねて来て正解だったな、書物には載ってない話が聴けそうだ。
「本や書物には書かれていないじゃろうな、海竜様はこの街の船乗り達の間で伝わってきたの話じゃからの、最近ではその話を知っている者もとんと減ってしまってる様じゃし」
「是非その話を聞いてみたいです、どんな話なんです?」
元の世界のネッシーや雪男のようなUMAみたいな存在だろうか、あの手の話は結構好きだ、実在するかどうかはともかく浪漫を感じる。
「色々な話がある、嵐で沈みかけた船を救った話やモンスターに襲われた異国の姫君が乗った船を助けた話なんかもあるの」
「人間を助けてくれる存在なんですね、それにしてはあんまり人々に知られてないみたいですね」
「まぁ子供を寝かしつける為のおとぎ話みたいな物じゃからな、儂も昔は海竜様の存在を信じては無かった」
「昔は、って事は今は信じているんですか?」
俺の問いかけにブロスタさんは無言で頷いた。
「笑わんでおくれよ?儂は昔海竜様に命を救われた事があるんじゃ、街の連中は夢でもみたのだろうと信じちゃくれんかったがの」
ブロスタさんは昔を思い出すかの様に遠い目をしてポツポツと語り始めた。




