066 謎の少年
紅い焔が消えた時魔族の女はこの世界からその姿を消していた、焼け跡には瞬身のレイピアと例の黒い魔核だけが残されている。
『ユイト!大丈夫!?土人形達が崩れていくわ!』
テミスから念話が入る、見ると村のあちこちで土人形達がボロボロとその身を崩していた、復活もしない様だ。
『あぁ、大丈夫だ、ゆっくりと休みたいよ、親玉が死んで土人形も動かなくなった様だな』
「終わりましたね、村の人達に怪我はありません、完全勝利ですね!」
「これで安心、ゆっくり休める」
駆け寄って来た3人がフラフラになった俺を支えてくれた。
「ガルが手伝ってくれたおかげだな、アイツは一人前の戦士だ、もう子供扱いできない」
見るとガルはストークさんとカナリーに説教をされている、カナリーの拳骨がクリーンヒットした、痛そうだ。
「それにしてもあの女魔族の腕はビズミスの変貌した姿にそっくりだった、何か関係しているのか?」
「鋭いね鬼のお兄さん、あっ、ギャグじゃないよ」
「!?誰だっ!いつからそこにいた!?」
不意に後ろから声をかけられた、俺たち4人しかいないかった筈だ、緩みきった意識を即座に戦闘モードに切り替える。
「まぁまぁ、そんなに殺気を出さないでよ、今日は鬼いさん達と戦うつもりはないんだから」
突如現れた黒いフードを被った男は俺よりも一回り小柄な身体をしている、声の感じから男と云うより少年と言った方がいい年齢だろうか。
「ウチの出来損ないが勝手に色々悪さしていたんで処分しにきたんだ、鬼いさんが駆除してくれて手間が省けたよ、ありがとうね」
「お前は何者だ!?魔族なのか?それにあの女の腕はなんだ!?」
「ちょっと落ち着いてよ、そんなに1度には答えられないって、そうだね…迷惑を掛けたお詫びに一つだけ教えてあげる、これは偽核って言ってまだ開発中のとっておきさ、埋め込まれたモノに強力な力を与えるんだ」
黒いフードの少年は女の残した黒い結晶を拾い上げ俺達に見せる。
「偽核?強力な力?どう云う事だ?」
「鬼いさんが殺した領主様も僕の実験台だったんだよ、欲が強すぎて暴走しちゃったみたいだけどね、この出来損ないも失敗したしもう少し改良が必要みたいだ」
「ビズミスの事か!?お前の目的は一体なんだ!?言え」
体に鞭を撃ち咲夜を抜き少年に向ける、しかし少年は宙に体を浮かし俺の間合いから離れていた。
「質問の多い鬼いさんだね、僕の目的はこの世界を滅茶苦茶にする事さ、平和な世界ってゲームの世界にしてはイマイチだからね、瞬身のレイピアは鬼いさんにあげるよ、じゃあまたね」
次の瞬間少年の全身が黒い闇に包まれその姿を消した。
「アイツは一体?何故瞬身のレイピアの名前を知っていた…?」
緊張が解けたせいか意識がまどろんでいく、俺の記憶は一旦そこで途切れた。




