062 タイムリミット
鬼神化した俺は全速力でパフィン村へ急いだ、恐らく魔族が村を襲っている、村の戦える連中は全員魔族の探索に出ている、状況は最悪だ。
『ユイト!村に着くわ、近いわよ!』
「見えた!誰かが襲われている!」
村の入り口付近で黒い服を着た誰かが子供の首を締めている、あれは…ガルだ!
「その手を離せぇぇぇ!!」
抜刀しガルを掴んでいた手を斬りとばし救出する、良かった、無事な様だ。
「お前が魔族か?女子供だけ狙うとは卑怯な奴め」
「何者だ!よくも私の手を!」
女の魔族だ、頭には巻角が生え背中には翼が生えている、ゲームやアニメでよく見る悪魔の様な姿をしていた。
「村に世話になっている旅人だ、これ以上好きにはさせない」
『ユイトさん!もうすぐ鬼神化が解けます!』
呪いの石柱から村まで鬼神化を使い駆けつけた、タイムリミットが近い、早く魔族を倒さなければ。
「な…何なんだいアンタの力は…こんなバケモノとまともにやり合っていられないよ!ゴーレム達!私を守れ!」
女を取り囲むように人形が集まってくる、中には村人を担いでいる個体が混じっていた。
「大技は使えないな…仕方ない!」
俺は土人形の集団に飛び込み捕らえられた村人を救出する、最後の1人を救出し終わった時身体から力が抜けていくのがわかった、時間切れだ。
「タイムリミットか…」
倦怠感と痛みが身体中に広がる、100倍の身体能力で体を動かした代償だ。
『主さま、私達も戦う、実体化して』
「わかった、あの女は俺が相手をする、3人は村の人達を守ってくれ」
『無理はしないで下さい、今のユイトさんでは普段の力が出せませんよ!』
「それでもだ、人質を取られたらどうしようも無くなる、頼んだ!」
俺は3人を実体化させ魔族と対峙する。
「どこに仲間が隠れてたんだい?それにさっきまでの威圧感が嘘みたいだ、こっちにとっちゃ好都合だね、私の美しい腕を斬り飛ばしたお礼をさせてもらうよ!」
そう云うと女は残された片腕で腰の細剣を抜く、あの剣には見覚えがある、VRMMOの装備、『瞬身のレイピア』だ。
「楽には殺してあげないよ!覚悟しな!」
女の姿が消える、次の瞬間背後に殺気を感じた俺は前方に跳んだ、先程まで俺のいた場所には細剣を振り降ろした女が立っていた。
「クッ…身体にムリが来ているな…」
普段なら何も問題ない動きだが全身に痛みが走る、反応もいつもより遅い、思ったよりも鬼神化で身体がダメージを負っている様だ。
「良く避けたじゃないか、でも次はどうだろうね?」
再び女の姿が消える、瞬身のレイピアの固有スキル、短い距離だがワープが可能な1対1の戦いで非常に有効な能力、普段なら気配を察知してからでも対処は可能だが今の俺には最悪の相性だ。
「正面か!?グァァァっ!」
身体が追いつかない、一瞬反応の遅れた俺の肩を女のレイピアが貫いた。




