05 冒険者アルフ
それからの数日間俺達は村の用心棒として生活を続けた、何度か小規模の集団が防壁の外で農作業をしていた住民を襲撃したが怪我人を出さずに退治する事ができた。
「本当にアンタ達には感謝してるよ、草原イモの煮っ転がしだ、良かったら食べとくれ」
俺達が間借りしている集会所に昼間助けたおばさんが差し入れを持って来てくれた。
「ホクホクで美味しいです、ユイトさんも食べてみてください」
そう言って芋の乗ったスプーンを俺の口に運ぶサクヤ、所謂「あーん」だ、俺は異世界でようやくリア充の仲間入りを果たせた。
「相変わらず仲がいいねぇ、どうだい2人ともいっその事この村で家庭を持っちゃどうだい?アンタ達ならいい夫婦になれるよ」
おばさんがニコニコしながら俺達を見つめる、確かにそれも良いかも知れないな、サクヤはどう思うだろうか?
「私がユイトさんの奥さん…?こ、子供は何人くらいが良いですかね?私は3人くらいがいいかな〜と思ってます」
顔を赤くしたサクヤがモジモジしながら上目使いで俺を見ている、満更でもない様子だ。
2人この村で夫婦になる、昼は畑仕事をして夕方にはサクヤと子供達の待つ家に帰り一家団欒、そんな未来も良いかも知れない。
幸せな妄想に耽っていると何やら外が騒がしい事に気付く、何か問題でも起こっているのだろうか?
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「何しに帰って来やがった馬鹿息子!勝手に出て行ったと思ったらいきなり帰って来やがって!顔も見たくねぇ、村からでていきやがれ!」
「話を聞いてくれ父さん、明日になればギルドから仲間達もやってくる、ヤツらの巣がどこにあるか教えて欲しいんだ!父さんなら目星をつけてるんだろ?」
外へ出るとベータさんが若い男と言い争っていた、周りには村人達が集まり2人を囲んでいる。
「僕はこの村を救いたいんだ!頼む!教えてくれ!」
叫ぶ若者を無視してベータさんは自分の家へ帰って行く、残された若者に村人達が話しかけた。
「アルフ君…まだシータさんの事に責任を感じているのかい、あれは誰の所為でも無かった、責任を感じる事は無いんだ」
村人の言葉に若者首を振り答える。
「僕はもうこの村の誰もヤツらの犠牲にしたくないんです、その為に帰ってきました」
赤髪の青年、アルフの顔からは強い意志が感じられた。