055 異世界転移の真実
ストークさんの全身が淡く光っている、意思の無い瞳は俺を真っ直ぐにみつめていた。
「ストークさん！大丈夫ですか！？何があったんですか！？」
「心配させて申し訳ありません、この者は無事です、少し身体を借りています」
感情の無い声がストークさんから発せられる。
「まずは謝罪をしたい、貴方をこの世界に呼んだのは私です」
「！？どう言う事なんだ！？貴方は一体？」
「私はこの世界を創りし者、『神』と認識してもらって問題ありません、我が眷属たる精霊をこの者に降ろし今貴方がたと話をしています」
神様だって？それに俺をこの世界に呼んだ？意味が分からない、混乱してしまいそうだ。
「順番にお話しします、しばらく前にこの世界を滅ぼそうとする『新たな神』と名乗る存在が現れました、新たな神『偽神』とでも言いましょう、偽神は私をこの世界から切り離し私は世界に干渉できなくしてしまったのです」
「つまり神様は自分の作った世界から追い出されたって事ですか？」
「迂闊でした、私を世界から切り離した偽神は自分の眷属である魔族を新たに作り出し自分好みの世界へと創り変えるつもりで人類を滅ぼす準備を始めたのです」
スケールの大きな話だ、俺以外の皆も何が起こっているのか判らず何も言えないでいる。
「それを知った私はこの世界と親和性の高い世界、貴方がたがVRMMOと呼ぶ世界から幾つかの強力な武具を取り寄せ人間達に与えたのです、しかしそれが失敗でした」
「失敗、ですか？」
「はい、武具を己の力として扱う事が出来たのはほんの数人のみ、更にあろうことかその大半は魔族の手に渡ってしまったのです」
神様には悪いが間抜けな話だ、敵を倒そうと仕入れた武器をその相手に奪われたなんて事態をより悪くしただけだな。
「そこで私は最期の手段としてVRMMOの世界で最強とされている貴方をこの世界に召喚しました、随分勝手な話だとは思っています」
「全くです、それにそんな話をするなんて脅迫の様なものじゃないですか、俺が貴方への協力を拒めばこの世界の人類が滅びるかも知れないって事ですよね？」
「本当に申し訳ありません、しかしもう貴方に頼るしか方法がないのです、偽神が倒され再び私がこの世界に干渉できる様になれば貴方を元の世界に帰す事も可能になるでしょう」
現実の世界に戻る…か、確かに残して来た家族や友人の事は気になるがこの世界で出会ったサクヤにアイギスにテミス、それに仲間達に会えなくなるのは嫌だ。
「すぐに答えを出さずとも大丈夫です、この世界と貴方が元いた世界は時間の流れが違います、仮にこの世界で100年過ごし戻ったとしてもあちらでは一瞬の出来事です、ゆっくりと考えて下さい」
少しだけホッとした、いつかは答えを出さなければいけない事だが時間を掛けて考える事ができる。
「わかりました、貴方に協力する事にします、しかし貴方も俺に協力して欲しい、まずは俺の残りの装備品です、何処にあるのか知っているなら教えて下さい」
