053 狩猟神の耳飾り
「ユイト兄ちゃん達どうかしたの?」
俺達の様子を見ていたガルが口を開く。
「ああ、俺達が旅をしている理由は探し物をしているからなんだ、その探し物がどうやらガルの家の中にあるみたいでな」
言っている事はタカリ屋みたいだが真実なのだからしょうがない。
「みんな走るのが早いですよ、ん?何かありました?」
「姉ちゃんは相変わらず鈍臭いな、詳しい話は中に入って話そうよ」
ガルが扉を開け俺達を招き入れる、家の中は広くは無いが小綺麗で暖かな雰囲気が漂っている、机の上には料理の皿が並べられ俺達の分も用意してくれている様だ。
ガルとカナリーに勧められて席に着く、サクヤとアイギスは目を閉じてしきりに声の発信源を探している、その時奥の部屋から1人の美しいエルフが姿を現した、カナリーに似ているが少し大人びている、姉がいたのだろうか?
「ガルから話は聴きました、迷子になっているところを助けてもらったみたいで、それにカナリーが失礼をしたみたいですみません、カナリー?めっ!ですよ」
「ごめんなさいお母さん、でも元はといえばガルが1人で村から出たのが悪いのよ」
姉では無く母親だったのか、どう見ても20歳前後にしか見えないぞ、もう限界だ歳を聞こう、エルフの謎を暴くのだ。
「ガルはさっき叱りました、それよりも旅人さん達ありがとうね、私はストーク、この子達の母親よ」
「いえいえ、大した事はしていないですよ、初対面の女性に聞くのも失礼なんですがストークさんは何歳…」
「アレです!ユイトさん!ストークさんです!」
「主さま、耳!耳!」
「なんだよ2人とも、せっかくエルフの謎を…アレは『狩猟神の耳飾り』!?」
2人に言われストークさんの耳を見ると見覚えのある耳飾りがつけられていた、小さく太めのシルバーリングに赤い宝石が散りばめられた耳飾り、どこにでもありそうなユニセックスなデザインだが目にした瞬間それがVRMMOの世界の物だと確信出来た。
「私の耳飾りがどうかしましたか?最近偶然拾った物で可愛いから付けているんですよ」
俺は無くしてしまった『強力な装備品』を求めて旅をしている事をストークさん一家に話した。
「いきなりこんな事を言って信じてもらえるかは分かりません、俺の持ち物だって証拠も有りませんし、お金や魔石なら幾らでも払います、その耳飾りを俺に譲ってくれませんか?」
深々と頭を下げる、サクヤとアイギスも俺に続き頭を下げた。
「あらあら、頭をあげて下さい、元々拾った物なので持ち主さんがいるならお返しするのは当たり前です、もちろん見返りなんて要りませんよ」
そう言うとストークさんは耳飾りを外し俺の手に握らせてきた。




