048 エルフの少年
「そろそろ昼飯にするか?」
アイロンスティールの街を出発して1週間、俺達はザラキマクとの中程にあるヒルマイナの森の中を歩いていた。
「そうしましょう、お腹ぺこぺこです」
サクヤさんや、朝食に大盛りのシチューとパンを5つ程食べてませんでしたかね?
「主さま、あっちに泉がある」
森の中を通る街道から少し外れた所に綺麗な泉が湧いていた、休憩にはうってつけだ。
「あそこで休憩しよう、簡単に何か作ってくれるか?」
泉の近くに陣取りサクヤが料理を作る、肉と野菜を煮込んだスープとパンだ。
「今日のは自信作です!これがユイトさんの分です」
サクヤが俺の分をよそって渡してくれた、香草で肉の臭みを消したのか食欲を刺激する香りが漂う。
前回の旅ではカッパーさんが食事を全部作ってくれてたので気付かなかったがサクヤはかなり料理が上手い事がわかった、流石は食欲の化身、食事に妥協しないのだろう。
「美味しい、サクヤ、また腕をあげた」
「肉の臭みが全く無いな、凄く旨いよ、店で出しても通用するんじゃないか?」
「そんな事ないですよ、食材が良いからです、アイテムバッグさまさまです!」
褒められて嬉しいのかサクヤがくねくねと悶える。
「アイテムバッグが無ければ馬車を買わないといけなかった、アルフさんに感謝しないとな」
その時ガサガサと近くの茂みが揺れた、モンスターか?
「誰だ!いるのはわかっている!出てこい!」
咲夜を構えて音の聞こえた茂みに近づく。
「ご、ごめんよ兄ちゃん達、いい匂いがしたからつい気になって」
茂みの中から子供が飛び出てきた、しかしこれは…
「エルフ?」
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「ありがとう兄ちゃん達、腹ペコで倒れそうだったんだ、オイラこんなに美味いスープ飲んだ事ないよ、特に肉が美味かったなぁ」
「お粗末様でした、ガル君、食後のデザートはどうですか?」
「デザート?何か分からないけど食べる!」
草むらから現れたエルフの少年、ガルはすぐに俺達に馴染んでいた、明るく素直な性格で誰からも好かれるタイプだな。
「それで何で1人でこんな所にいたんだ?モンスターだって出るだろうし危ないぞ?」
「迷子になっちゃったんだ、ユイト兄ちゃんは旅の途中?」
「そうだ、ザラキマクの街まで行く途中でな、アイロンスティールからきたんだ、ガルの家はこの近くか?急ぐ旅でも無いから良かったら送っていくぞ?」
「本当?それじゃあお願いしようかな?実はモンスターに襲われた時弓を無くして不安だったんだ」
弓が使えるのか、流石はエルフ、エルフと言えば弓、古事記にもそう書かれている。
「ガル君、デザートのドーナツですよ」
「ドーナツ?何これ!?美味そう!」
ドーナツの甘い匂いに反応したガルが皿に飛びつく。
「ガル、落ち着くべき、ドーナツは逃げない」
それにしても…肉にドーナツ、エルフって雑食だったんだな。




