042 ビズミスの狂気
無数の触手が俺を目掛けて襲いかかってくる。
「クソっ『真空波』!!!」
不可視の刃が迫り来る触手を斬りとばす。
「無礼ですよ、貴方は平民でしょう?何故私の思い通りにならないのですか?大人しく死になさい」
「本当に会話が成り立たないヤツだな!もう1発!!」
もう一度真空波を打つが触手の再生が早い、ビズミスに届く前に触手に防がれ相殺された。
「だから何故伯爵である私の命令を聞かないのです!私を敬っていれば死ねる筈でしょう!!」
ビズミスの触手の先端が淡く光を浴びる、何か来る!
「私を敬いなさい!!」
無数の触手の先端から滅茶苦茶にレーザーの様な光線が発射される。
「『イージス』!!」
突き出した腕の前に光の壁が展開され光線を弾く、光線は10秒ほどビズミスを中心に乱射され周囲に甚大な被害をもたらした。
「カッパーさん!無事ですか!?」
「私は平気です!しかし騎士団が…」
カッパーさんはそのふくよかな体からは想像もつかない速さで跳ねまわり光線を全て避けていた。
しかし騎士団の被害は甚大だ、光線は1本1本の威力は高くない様だが騎士達の鎧は焼かれ、中には露出した間接部を撃ち抜かれている者もいた、もう一度あの攻撃が来れば命を失う者も出るだろう。
「アイギス!実体化して騎士団を守ってくれ!」
『わかった、主さま、ふぁいと』
アイギスが実体化してカッパーさんに駆け寄る。
「貴方は…アイギスさん?それに今のは…」
「説明はあと、怪我人を集めて、私が守る」
カッパーさんの指示で重傷者を中心に騎士が集まる、これで向こうは大丈夫だ。
「何故誰も死なないのですか!まさか私を敬ってないのですか!?」
また触手の先端が光り光線が乱射される。
「芸のないヤツだな!『イージス』!」
再び吹き荒れる光の嵐、アイギスの方もシールドを展開し光線を防いでいる、被害はない様だ。
「向こうの攻撃も効かないがこっちも攻めあぐねるな」
『鬼神化しますか?いつでも行けますよ』
「もう少し様子を見よう、嫌な予感がする」
再び光線を防がれたビズミスの巨体が小刻みに震えている。
「な・ぜ・で・す!!?まさかあの女の様にこの私を敬っていないと言うのですか!?そんな事は断っじて許されない事です!貴方達は間違っています!私を敬い、私から搾取される事を誇りに思うべきです!私は伯爵なのですよ!」
地を震わせる程の大声でビズミスが叫ぶ、言っている事は支離滅裂で知性も感じられない、言葉ではなく動物の鳴き声の様な物だ。
ビズミスの叫びが終わる頃アイギスから念話が入ってきた。
『主さま、大変、アイツの中にタリアムがいる!』




