336 北の空
「ぶぁ…ぶぁ…ぶぁ~くしょい!!」
「クェッ!?クェッ?クェーッ!?」
「悪いシーク、急にデカい音を出して驚かしてしまったな」
すぐ隣を飛んでいたハイドピジョンのシーク突然の俺のくしゃみに驚き体勢を崩してしまった。その後すぐに俺を心配そうな鳴声をあげた。長年鬼畜エルフのオウルさんと行動を共にしているとは思えない優しいヤツだ。
『大丈夫ですかユイトさん?私達は依代に憑依してるから寒さを感じませんが…大分寒いんじゃないですか?』
「アイギスのイージスを張って外気を遮断してるからマシになってると思うんだけどそれでもかなり肌寒いな」
『主さま、アレプデスに急ぐ気持ちは分かるけど無理はダメ。到着しても体調を崩して戦えなくなったら本末転倒』
空の旅を始めて今日で2日目、オウルさんの話ではシークは3日程でドラゴンロックからアレプデスを飛ぶ事が出来るとの事だった。
「なんとか今日中にはアレプデスへの船が出ている港には到着したい。海上では休憩も出来ないからからそこで一晩ゆっくりできればいいんだけど」
『アイギスちゃんの言う通りよ。アレプデスを襲ったのはドラゴンだけじゃないわ、到着してすぐに強敵と戦闘になるかも知れない事も考えなくちゃ。今日はもう地上に降りて野営の準備をしましょう』
『私達は依代に憑依してるだけだから全然疲れてないわ。設営や食事の準備なんかは私達でやるからアンタはゆっくりしてなさいよ』
『おっ?なんだテミス?お主がその様にユイトを甘やかすとは珍しいの。ふむ、これが所謂デレというやつか』
『う、五月蝿いわねこの中二病!これはタダ仲間としてユイトを気遣ってるだけなんだからね!』
サクヤ達は依代に憑依してもらっているので確かに消耗はしてないだろう。しかしルメスはどうだろうか。今俺が空を飛んでいるのは彼女の依代の神靴ヘルメスのおかげだ。
「ルメス、お前は大丈夫なのか?」
『うん、あくまで神靴ヘルメスの力を使ってるのはユイト自身だからね。ボクも本当ならユイトの負担を減らしてあげたいんだけど』
「このくらいなんて事はないさ。長時間飛んでるるおかげで飛翔の力の使い方もコントロールが上手くなってきた。でもそろそろ陽が沈むな、仕方ないけど今日はこの辺りで夜を明かすとするか」
一回くしゃみをしただけなのにサクヤ達は俺の体調をかなり心配している。ドラゴンロックでもう一つの人格に身体を支配されてから皆俺に対して酷く過保護になった気がする。
「クッ!クェーッ!!」
「どうしたシーク?何か見つけたのか…アレは…海?って事は港も近い筈だ」
気がつけば今日の目的地の港の近くまで来ていた様だ。シークが鳴声でもう海が見える所まで来ていた事を知らせてくれた。遠く海岸線に家の灯りを確認出来た。
「この距離だと後10分ってトコか、よし、あと一踏ん張りだ」
俺は気合を入れ直し遠く眼下に見える港の灯へと速度をあげたのだった。




