329 安息
「くは~っ…生き返る。やっぱり温泉って最高だな。この湯に浸かるのも今日が最後だと思うと残念だ」
邪竜の復活から数日後、何とか火山の噴火から逃げる事が出来た俺達は山の三合目辺りに作った野営地で戦いの傷を癒していた。
「本当にもう身体は大丈夫なのかよユイト?無理はするんじゃ無ぇぞ」
「休める時に身体を休めるのは冒険者として大切な事だ。ってユイト君は冒険者じゃなかったな、歳をとるとどうも説教臭くなっていけないね」
「もう十分に休みは取れました。それにしても…この光景を見ていると本当に俺達が生き残れたのは運が良かったんだなと考えさせられます」
俺は湯に浸かりながら山を見上げる。邪竜の目覚めが原因となり休眠中の火山だったドラゴンロックは噴火。その結果山の上半分程の木々は溶岩で焼き払われゴツゴツとした岩肌が露出した山になってしまった。
「確かにな、あれだけ豊かな自然が広がっていたドラゴンロックも今やでっけぇ岩山になっちまった」
「問題は山から逃げてしまったドラゴン達だね。勿論偽神や邪竜の事も心配だけどドラゴンだって無視出来る問題じゃない」
はーっと3人の溜息が重なる。これからの事を考えると解決しないといけない問題が山積みだ、やらなくてはいけない事が多すぎて気が滅入りそうになる。
「ユイト、お前はこの後北を目指すんだったよな?俺達も話し合って北を目指す事にしたんだが良かったら一緒に行かねぇか?」
「それは勿論大歓迎ですけどシグマさん達は一旦王都に戻る予定じゃなかったですか?アン達の事もあるしレイも国王様の元へ帰すって話だったんじゃ?」
「それがそんなに時間の余裕が無いみたいなんだ。今朝シークが冒険者ギルドから持って来た手紙だよ、読んでみて欲しい」
ほら、とオウルさんが一枚の手紙を露天風呂の淵に置いた荷物から取り出して手渡してきた。厚くて水に濡れても大丈夫な紙の様だ、伝書鳩のシークが雨に濡れても平気な様に考えられているのだろう。
「えーと…アレプデスって街ががドラゴンの襲撃に遭ったって書かれてますね。ランクA以上の冒険者は即刻今受けてる依頼を放棄してアレプデスに向かえって命令書みたいですけど」
「アレプデスってのは北の大地にある独立都市国家だ。世界で唯一のグランズ王国の属国じゃ無い国としても有名だな」
「アレプデスの位置はここから邪竜やドラゴン達が飛び立った方角とも一致する。もしかするとドラゴン達が街を襲った事にもカイト達が関わっているかも知れないね」




