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326 逃げる竜

俺達は全員で手を繋ぎ大きな円を作った。転移魔道具、どの様な物かは知らないが確か転送の魔法はこの世界では不可能とされていた技術の筈だ。アイロンスティールでタリアムが必死に研究していたが何故カイト達はこんな魔道具を持っているのだろうか。


「さぁ、皆きちんと手を繋いだね?途中で離したら最悪体がバラバラになったり異空間に取り残されたりするから気をつけてね」


「ちょっ!そんな物騒な事なら先に言って…」


俺の抗議の声を遮る様に全員の周りに闇の様な空間が広がる。身体が宙に浮く感覚。思わず目を閉じてしまった眼を開くとそこには緑の木々が広がっていた。


「ここは…外?周りの景色を見るにドラゴンロックの八合目辺りか?」


「驚いた、主さま。これってタリアムが研究してた転移魔法陣?」


「いや、はっきりとはわからないが多分違う。カイトのヤツがMMORPGから持ち込んだ何かしらのアイテムの仕業だと思うんだが…」


チラリとカイトの方を見ると目が合ったが逸らされてしまった。どうやらこの転移魔法について俺達に説明するつもりは無さそうだ。


「グゴォァァァァッ!!!」


その時だった。どこからともなくけたたましい獣の鳴声が聴こえて来た。只の鳴声ではない、聴くだけで心臓を鷲掴みにされた様な気持ちになる。本能がこの鳴声の主に警戒しているのだ。


「み…皆さん!アレを見て下さいませ!」


「何なのよ…ドラゴン達が何かから逃げようとしてるの?」


レイが指した方を見るとそこにはドラゴン達が我先にと空へ逃げたしているのがみえた。大勢のドラゴン達が塊になり遠目からは雲の様にも見える。


「こりゃ大事だ。あのドラゴン達が街や村を襲えばどれだけ被害がでるか分かったモンじゃ無ぇ…」


「ドラゴンロックのドラゴン達が山から離れるなんてエルフの伝承でも聴いた事が無い…本当に邪竜が目覚めてしまったのか…」


ドラゴンは他のモンスターに比べ強力な力を持っている。あの数のドラゴンが人里を襲う様になればそれだけで世界の危機だ。しかし今本当の危機は別にある。一度対峙した俺だから気配で分かる。ヤツが…偽神がついにこの世界に降りたってしまった。


「来るよ…鬼ぃさん。アレを見てみなよ」


「分かってる。やってくれたな、見事にお前達の思い通りだよ」


ドラゴンロックの山頂、つい先程まで俺達がいた場所に禍々しい気配が強くなる。かなり離れている筈だが寒気が止まらない。そして…


「皆、伏せるんだ!身を低くして頭を守れ!!」


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