322 帰還
「やりやがったなクソ女…」
「へへ…ボクだけじゃ無理だった。皆の力を合わせたんだから当たり前だよ」
俺の身体に輝く偽核に破邪の短刀が突き刺さりヒビが入る。もう1人の俺はそのまま片膝をついて動かなくなってしまった。
「ダメ!エンチャントシールドでも完全には2人の合体攻撃を防げなかった。メリッサ治療はよ!」
「わかったわ!ルメスちゃん今行くわよ!」
トロンとドロシーの全力攻撃に自ら突っ込んで行ったルメスは何とか自力で立っているがかなりダメージを負っている。その姿を見てアイギスが駆け寄ってくる。
「これで俺はまたあの甘ちゃん野郎の中に戻されるのか…クソ、世界どころか結局誰1人ブッ殺す事も出来なかった…」
「もう嘘をつくのは辞めなよ。キミは最後ボクを斬れ無かったんじゃない、斬らなかったんだ」
「ハッ…適当な事言ってんじゃねぇ。あまり舐めた事言ってるとブッ殺す…」
ヤツが何かを言い終える前に俺が閉じ込められた空間に亀裂が走った。同時に戻って来る自分の身体の感覚。真っ暗だった空間が白に変わり次の瞬間俺の目の前には心配そうに顔を覗き込む仲間達の姿があった。
「…戻ってこれたのか?そうだ!サクヤは!?」
「私はここですよ。お互い元に戻れて良かったです、ユイトさん」
鬼神化した俺と一緒に意識の中に閉じ込められたサクヤが心配だったが無事元に戻れた様だ。俺の身体から溢れた光がサクヤの形に集まりやがて光の中からサクヤが現れた。
「良かった、これで元通り。作戦成功、ぶい」
「ルメスちゃんの傷も無事治す事が出来たわ。お帰りなさい、ユイト君」
「あぁ、ただいま。皆、心配かけて悪かったな」
今回ばかりは自分の力だけではどうしようも無かった。命懸けで俺を元に戻してくれた皆には頭が上がらない。
「よう、元に戻れたみてぇだな?身体は大丈夫か?」
「シグマさん…腕の傷は大丈夫ですか?今回はその…すみませんでした。俺のせいで危ない目に合わせてしまいました」
「気にするなって。お前さんだってあんな事したかった訳じゃ無ぇんだろ?腕の傷だってオウルの傷薬で何の問題も無ぇ。それよりも心配なのはお前さんの身体だ。どうだ?立てるか?」
俺の周りに集まったサクヤ達を掻き分けシグマさんが俺に手を差し伸ばす。相変わらず豪快な人だ、別人格に身体を乗っとられていたとしても普通なら自分を殺しかけた相手にこんな風には接する事は出来ないだろう。
「ありがとうございます。よいしょっ…いだだだだ!」
シグマさんの手を取り立ち上がろうとした俺は全身に走った激痛で意識を失いそうになってしまった。




