319 暖かな気持ち
真っ暗な闇の中、自分の身体の感覚さえ曖昧な状態の俺にもこの状況を打破する為に出来る事は有る。
「なぁサクヤ?ザラキマクで食べたスープパスタを覚えてるか?」
「勿論覚えてますよ。あのスープパスタは絶品でした、思い出しただけでお腹が空いてきます…なんでいきなりそんな話をしてるんですか?」
「いや妙にあのスープパスタが食べたくなってな。サクヤならあの味を再現できるんじゃないかと思ってさ」
「うーん…似た様な味なら作れるとは思いますけど流石にあの味をそのままって訳には…ってそんな意味じゃありません!今はアイギスちゃん達がピンチなんですよ!?ご飯の事なんて考えてる場合じゃ無いです!!」
食欲の化身サクヤも流石に仲間のピンチに食事の事を考える余裕は無いらしい。息を切らしながら俺へ抗議の言葉を捲し立てる。
「まぁまぁ落ち付けって。俺だって何の考えも無しにこんな話をしてる訳じゃないんだ。さっきもう1人の俺が言った事を覚えてるか?」
「えーっと…ルメスちゃんの幻影が首を斬られた時の事ですよね?」
「アイツは俺に自分の事を憎めと言った。そうすれば自分はもっと強くなれるからってな。だからその逆の事をしてやろうと思うんだ」
ヤツは俺の負の感情の化身。本人も言っていたが俺の憎しみや怒りの感情が強くなればなるほどヤツは力を増す様だ。それならば逆に俺が楽しさや安らぎを感じれば負担を与える事が出来るのではないだろうか、試して見る価値は十分にありそうだ。
「それにさっきルナが皆の雰囲気を和ませた時ヤツはかなりイラついていた。サクヤ、お前も協力してくれないか?」
「そういう事だったんですね。それなら私もうんと楽しくなる様なお話を考えます。あっ、温泉の話なんてどうでしょう?」
「温泉か、ドラゴンロックを降りたらアレに入れなくなるのは残念だな。街で温泉に入れる様になれば最高なんだけど」
「そうですね、街の皆さんにも是非温泉の素晴らしさを伝えたいです。気軽にドラゴンロックに来る事が出来る様になれば良いのですが…」
「そうだな、タリアムの研究が完成すれば皆も気軽に温泉に入れる様になるかも知れないぞ?アイツは元気にしてるかな?」
俺とサクヤは今までの旅を振り返り取り止めの無い話を始めた。この世界で出会い仲良くなった多くの人達。皆の顔を思い浮かべると暖かな気持ちになってくる。
「クソクソクソッ!俺の中で何気持ち悪ぃ事考えてやがる!やめろ!力が…力が抜けていきやがる!」
ブクマ1000件突破しました(*´꒳`*)最初はこんなに多くの方に読んでいただけるとは考えてなかったので感無量です(´;Д;`)最近転職と引越し等バタバタして更新が遅れてますが必ず完結させます。今後も楽しんでいただければ幸いです。本当にありがとうございますm(__)m




