310 荒れ狂う鬼
「ハハハハハ!壊しても壊してもまだまだ玩具が湧いてくる!最高だな!」
襲いくるモンスターの波をたった1人で蹴散らすユイト。カイトと呼ばれる少年の救出をアイギス達に任せ私達はユイトの暴走を止めに来たのですが…正直私にどうこうできる相手では無さそうです。
「クッ…化け物め。一万近くいた筈の下僕達があっと言う間に…こうなれば出し惜しみは無しです!」
「痛ッてぇぇ~!!なんつー馬鹿力だよ?一回打ち合っただけで手が痺れちまいやがった…」
「今のユイト君と打ちあって腕がもげて無いだけ儲け物だ。ほら、エルフに伝わる秘伝の回復薬だ。痺れている方の腕に使ういい」
あのシグマ師匠ですらユイトを止める事は難しい様です。苦笑いを浮かべながらオウル師匠に渡された薬を腕に振りかけています。
「しかし参ったな…こりゃ邪竜や偽神が目覚める前に世界が滅ぼされちまうぜ?」
「そうだね…ここが街や村じゃ無くて本当に良かった。今のユイト君が人の集まる場所に行けばどれだけの被害がでるかわかったもんじゃない」
不幸中の幸いと言うべきかドラゴンロックの山頂は前人未到の地。こんな場所へ来る人間なんて私達の他にはいません。
「アイギス達は上手くいったでしょうか?ユイトを元に戻すにはカイトと呼ばれているあの少年の協力が必要不可欠ですわ」
「どんな方法でユイトを元に戻すかは知らねぇがあんなに暴れ回られちゃあな…なんにせよアイツの動きを封じない事にはどうしようもねぇぜ?」
「正直今のユイト君を止める方法が思いつかないな。あのモンスター達だって決してザコじゃなのに全く相手になっていない」
私達の目の前に広がるモンスターの死骸の山。全てユイト1人の仕業です。はっきり言って異常、こんな力が有れば1人でグランズ王国…いや世界を滅ぼす事だって可能なのではないでしょうか。
「悔しいけどシグマとオウルですら圧倒される今のユイト相手じゃウチらは足手まといにしかならないね。こんな事ならアイギス達を手伝った方が良かったかな?」
「そうね、私達とレイちゃんは出来るだけ今のユイト君に近づかない方が賢明だわ。本音を言えばこの場から逃げ出してしまいたい気分よ」
トロンとドロシーの2人も今のユイトの力を肌で感じとっている様子です。瞬身のレイピアの力で少しは戦力になると思っていたのですが考えが甘かった様です。隣をみるとアンも悔しそうに唇を噛み締めていました。
「確かに今のユイトは強ぇ…でも俺達が諦めたら誰がアイツを救ってやれる?俺だって仮にも最強と呼ばれた男だ。仲間の為に命を賭ける位の意地は見せねぇとな…来い!如意刀!!」




