298 矢の雨
「こりゃかなりヤバいな…サクヤ!聴こえるか!?」
『ユイトさん!?大丈夫でしたか?あの魔族とどこかへ行ってしまって皆心配してました』
離れ離れになったサクヤに念話で話しかける。サクヤは慌てた様子だ。いきなりの事で皆に心配を掛けてしまったな。
『そっちは皆無事か?俺の方は少しマズイ事になってな。鬼神化したいが大丈夫そうか?』
『私達の方はレブと名乗った魔族が呼び出したモンスターと戦闘中です。オウルさんに確認してみますので少しだけ待って下さい』
マズイな、向こうも既に戦闘中だったか。鬼神化すればサクヤは俺と一心同体になってしまう。
「どうしたの鬼ぃさん?ボーっとしちゃってさ。降参するなら許してあげるけどどうする?」
「降参なんてしないさ。ただお前をどうやって倒そうか考えていただけだ」
「あはは、この状況でそんな事言うなんてただの強がり?それとも自分がピンチだって事もわからないお馬鹿さんなのかな?まぁいいや、僕を楽しませてよ!」
カイトが腕を振り下ろすと宙に浮いた弓から一斉に放たれた。この数を全て躱す事は不可能だ。
「本当に洒落になってないぞ!?これで凌ぎ切る!金剛!!」
神甲アイギスの金剛を発動し攻撃に備える。あの野郎なにが「殺す気は無い」だ。こんな攻撃まとも受けたら肉片一つ残さず消し飛んでしまうぞ。
「はぁはぁはぁ…なんとか凌ぎきったか?」
「おぉ!無傷だなんて流石は絶対王者のユイトさんだ。今使ったのはアイギスの金剛かな?」
カイトの攻撃を何とか凌ぎ切れた。一斉射撃の威力は凄まじく俺の立っていた場所を中心に地面の岩盤がクレーター状に吹き飛んでしまった。一定時間自分を無敵状態にする金剛を使わなければ今頃俺は間違い無く死んでいただろう。
「ご名答だ。お前さっき俺の事を殺すつもりは無いって言ったよな?この攻撃を見る限りとてもそうは思えないぞ?」
「絶対王者ならこの位の攻撃で死ぬ筈ないからね。さーて次はどうしようかな?」
「悪いが次は俺の番だ!これでも喰らえ!青龍!朱雀!」
最上位剣スキル2つの同時発動。先程目の当たりにしたがカイトの攻撃力は脅威だ。やられる前にやるしかない。
「わっ!?そんなに怒らないでよ!盾達!僕を守れ!」
「そう動くと思ってたぞ!本命はこっちだ!!」
青龍と朱雀からカイトを守る様に幾つもの盾が一箇所に集まる。これで他の方向からの攻撃は防げまい。俺は玄武を叩きこむ為にカイトへと距離を詰める。玄武は技のスピードこそ遅いが命中すれば敵はなす術も無い。