297 ランキング
「おい、まさかその程度で終わりか?」
「ははは…ランキング1位で名前がユイトって鬼ぃさんまさか絶対王者のユイトさん?」
「絶対王者か、確かそんな風に俺を呼ぶ連中もいたな」
MMORPGでのPvPではランキング上位の常連には各々二つ名がつけられていた。俺につけられた二つ名は絶対王者。実際には毎回ランキング1位を取れていた訳ではないが他人が呼び始めたのだから仕方ない。
「こんな世界で絶対王者と闘えるなんて思わなかったよ。僕鬼ぃさんの動画を見てPvPの勉強をしてた、ファンだったんだよ」
「そうか、それじゃ俺の話を聞いてくれないか?偽神と縁を切るんだ」
「幾ら鬼ぃさんの頼みでもそれは聞けないね」
「ならお前を捕まえて大人しくさせるしか無いな。さっきのがお前の全力なら俺に勝つ事は出来ない」
カイトは確か弱くは無い。しかし偽神がわざわざこの世界に呼び寄せた人物がこの程度の実力とは考え難い。おそらくヤツはまだ何か隠してる力がある筈だ。
「同じ装備なのにここまで力の差が出るなんてね。PSの差が歴然だよ」
「その割には余裕がありそうじゃないか?」
「これがMMORPGなら僕が鬼ぃさんに勝つ事なんて出来ないだろうね。MMORPGの中ではね」
倒れていたカイトが立ち上がるとヤツの周囲の空間が歪んだ。嫌な予感がする、狩猟神の耳飾りも目の前にいる敵が危険な事を俺に知らせてきた。
「でもこの世界はMMORPGじゃない…だから僕はこんな事もできるんだよ!」
「空中から剣が生えた?それに槍や弓も…待てよ、その武器には見覚えがある…まさか!?」
カイト周囲にどこからともなく次々と武器が現れる。様々な姿形をした剣や槍、俺はその全ての武器に見覚えがある。
「MMORPGの装備品のほぼ全てを持っているって話はウソじゃ無かったんだな…」
「どう?驚いてくれたかな?確かに僕は真っ向勝負なら鬼ぃさんには敵わない。だけどこの全ての装備品が鬼ぃさんの敵だったとしたらどうかな?」
「幾ら装備品を持っていても装備出来る数には限りがある。数だけ揃えても意味がないぞ」
驚かさはしたが言った通り装備品だけ有ったとしても何も怖くはない。1人の人間が剣を何十本も持ったり鎧を何重にも着込む事は出来ないのだ。
「そうだね。だけどこの装備品全てが僕の思い通りに動くとしたらどうかな?こんな風に」
カイトの周囲に有る装備品の中から複数の弓がヤツの頭上へと集まり矢が装填され俺へと狙いを付ける。どう言う原理かはわからないがこれはマズい。あれは全て普通の弓では無い、それぞれが特殊な力を持ったMMORPGの装備品だ。