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292 捕食

ゲルトの表情が悔しさで歪む。戦いには相性がある。今の自分では月下の外套を纏った俺に敵わないと悟った様だ。


「どうしてだ…どうして私は貴様に勝てない!」


「今のお前は見ていられない、憎まれている張本人が言うのもなんだがもう諦めた方が良い」


「頭では理解出来ているのだ!だが…心が…心の奥にいる何者かが貴様を憎む事をやめさせてはくれない!アァァァァァァ!」


頭を抱えてうずくまるゲルト。様子がおかしい、今のヤツは危険だと狩猟神の耳飾りも最大級の警報を鳴らしている。


「……………………」


「どうしたんだ…お前…ゲルトだよな?」



「……………………」


ゲルトの纏う雰囲気がガラリと変わった。先程までのゲルトは怒りに身を燃やす激流だとすれば今のヤツは感情を一切持たない静水。いや、俺の目の前にいる男は本当にゲルトなのか?


「!?今のは?流星撃を…撃ったのか?」


「……………………」


その場を動く事なくゲルトが流星の槍の先端をこちらへ向けた瞬間俺のすぐ側の地面が吹き飛んだ。生半可な破壊力ではない、当たればタダではすまないだろう。


「今のは警告のつもりか?それとも狙いを外しただけか?」


「……………………」


「何を聞いてもだんまりか。ゲルト、お前はお前で無くなってしまったんだな…」


ゲルトの身に何が起こったのか分からない。意思の無い表情でただ敵意だけを俺に向けてくる。


「偽神に身体を乗っとられたのとも違う様だ。!?何をやっているんだ!?」


「グッ…グブッ…グガァァ!」


俺は目の前で起こっている事に呆気に取られてしまった。ゲルト、いやゲルトだったモノは手に持っている流星の槍を自らの身体に深々と突き刺したのだ。


「槍を喰っている?これも偽核の力だっていうのかよ!?」


「フーッ…フーッ」


槍が突き刺さった箇所から無数の赤黒い触手が現れ槍を取り込み始めた。捕食だ、ゲルトだったモノは流星の槍を喰っているのだ。


「これ以上お前をほっとくと何が起こるかわからない。一気に決めさせてもらうぞ!行けっ!朱雀!」


槍を捕食中のゲルトへと朱雀が襲いかかる。今ならば避ける事も出来ないだろう。偽核の再生力を持ってしても朱雀の炎に身を焼かれれば消炭になる他無い。


「せめて苦しまずに死んでくれればいいけど…」


「キシャァァァッ!!」


断末魔の雄叫びをあげるゲルト。レブと名乗ったもう1人の魔族の事が気になる。轟々と音を立て燃えるゲルトに背を向けようとしたその時、朱雀の炎が突如ゲルトの身体から弾き飛ばされた。

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