284 大空洞
レッドドラゴンの死体の山を後にした俺達は更に上へと山を登った。頂上に近づくにつれ植物が減りゴツゴツとした岩が目立つ様になってきた。確かドラゴンロックは元々火山だと云う話だったな。
「さて…確か海竜様の話だと確か山頂に有る大岩がルシオンを封印しているって話だったけど…」
「岩だらけ…だな。これじゃどの岩がルシオンを封印しているかわかりゃしねぇぞ?」
ボリボリと頭を掻きながらシグマさんが溜息をついた。俺達の目の前に広がるのは大小様々な岩の数々、この中にルシオンを封じている岩があるのだろうか。
「海竜様も直接その岩を見た訳じゃ無いって話でしたし一つ一つ調べて回るしか無さそうですね」
「幸い人数はいるから手分けして調べてみよう。何か起こってもいい様にあまり離れ過ぎない様に気をつけるんだよ」
皆で手分けして山頂に転がる岩を調べる。どの岩も特に変わった様子は無い。1時間程経った頃不意に誰かの叫び声が聞こえた。俺は近くを調べていたサクヤとともに叫び声が聞こえた方へと急いだ。
「誰ぞ!誰ぞ!助けて欲しいのだ!真っ暗で何も見えないのだ!」
「ルナか!?どこにいるんだ!?返事をしてくれ!」
「こっちなのだ!壁に寄りかかったら急に穴が空いて落っこちたのだ!」
悲鳴の主はルナだった。岩壁の一部が崩れ穴が空いている奥からルナが助けを呼んでいる。
「なんでこんな場所に穴が空いたんだ?それに階段になっているみたいだな…サクヤ、灯りを出してくれないか?真っ暗で何も見えない」
「ルナちゃんが無事な様で一安心です。早く助けに行きましょう」
サクヤに出してもらった火球の灯りを頼りに壁の穴から続く階段を降りていく。明らかに人の手によって作られた階段だ。少し降りると座り込んで涙目になっているルナを発見する事ができた、どうやら怪我もない様だ。
「ひぐっ…ユイト、サクヤ…怖かった、怖かったのだ!」
ルナが俺へ飛びついて来た、暗闇が怖かったのか鼻水まで垂らしている。確かコイツ自分の事を闇の女王とか名乗っていなかったか?
「大丈夫だったか?どうしてこんな所に階段が…どう考えても自然に出来た物じゃいぞ?」
「ユイトさん…これは一体…」
「どうしたんだサクヤ、何か見つけ…!?」
サクヤが何かを見つけた様だ。胸元に顔を埋めるルナから目線を上げた俺は言葉を失ってしまった。
「なんだこの空間は…それにアレは…?」
階段を降りた先にはだだっ広い空間が広がっていた。これは遥か昔ルシオンを封じた人達が作り上げた物だと俺は直感した。