282 反省
「グギュルルル~」
ドラゴンロックの野営地にレイとアンの腹の虫が鳴る音が木霊する。2人は皆に心配をかけた罰としてオウルさんから晩御飯抜きの罰を言い渡されたのだ。
「うわ!?なんだいこの肉は…噛めば噛むほど旨味が溢れてくるよ。こんなに美味いモノがこの世に有ったなんて…」
「ドロシーちゃん、こっちのスープも飲んでみて。全身に力が漲ってくるわよ」
レッドドラゴンの肉が初体験になるトロンとドロシーもこの肉の魅力の虜になった様だ。サクヤが張り切って作った料理を次々と平らげていっている。
「ルナのヒドゥンフィールドの中なら料理の匂いを気にせずに済むから助かるよ。外でこんな事をしたらあっという間にドラゴン達が寄ってくるだろうしな」
「ふふふ…もっと余を崇め奉るが良い。あっユイト、その唐揚げもう一つ取ってくれない?」
ルナも料理を食べるのに夢中でキャラを作りきれてない。中二病でも美味い飯を前にしたら症状が治まる様だ。
「でもこうゆっくりと出来るのもレイとアンのお陰かも知れないな。2人の捜索で丸一日潰れてしまったけどレッドドラゴンの肉も大量に確保出来た。オウルさん、2人を許して料理を食べさせてあげませんか?」
先程からレイとアンは隅っこに座り込んで捨てられた犬の様な瞳でこちらを見つめている。そんな2人を見ていると折角のご馳走が喉を通らない。
「うーん…これはもう2度と皆に心配を掛ける様な事をさせない為の罰だからね。でも確かに少し可哀想な気もする、どうしたものか…」
おぉ、ダメ元で聞いてみたがオウルさんも美味しい料理のおかげで気が緩んでる様だ。もう一押しすればいけそうだな。
「2人も十分に反省しただろ?今後は勝手な事をして皆に心配を掛ける様な事はしないよな?」
「えぇ、自分達がどれだけ迷惑をかけたか見に染みて理解しましたわ。本当にすみませんでした」
「わ!私も反省しているわ!だから料理を食べさせて…むぐっ!?」
アンが余計な事を言いかけたが即座にレイが口を封じた。今回の事件での一番の収穫は2人の仲が良くなった事だ。この前まで喧嘩ばかりしていたのが嘘の様だ。
「本当に反省してるのかい?アンが何か言いかけた様な気もするけど…分かった、2人とも料理を食べると良い、その代わりもうこの様な事はしないでおくれよ。約束だ」
鬼畜エルフと呼ばれるオウルさんにも慈悲の心は有った様だ。2人は顔を見合わせ頷くと一目散に料理の方へと駆け出して行った。