264 握手
似た者同士、そう、何故アンを見ていると無性にイライラするのか今理解できました。私は今まで自分に対しての不満を自分と似た者同士のアンにぶつけていたのです。
「そう…ね。確かに未熟なところなんてそっくりね。そしてそんな自分を許せないところも。なーんだ、私が本当にムカついていたのはアンタじゃなくて自分にだったんだ」
「私もですわ。貴女を見ていると中々強くなれない自分自身を見ている様で…どうやら私達はお互いに八つ当たりをしていた様ですわね」
「フフフ、私達ったら本当にどうしようも無いわね。その…今まで色々とごめんなさい」
「私の方こそすみませんでした。ねぇ?アン、良かったら仲直りの握手をしませんか?」
私が差し出した手を握ろうとしたアンが慌てて手を引っ込めました。見ると顔が真っ赤になっています。どうやら恥ずかしがっている様です。
「もう!そんなに恥ずかしがられたら私まで恥ずかしくなってしまいますわ…えいっ!」
「ちょっ!そんな無理矢理!?全く強引なんだから…」
「強引?先程私を無理矢理連れ出したのはどちら様でしたか?ふふ…私達強引なところもそっくりですわね」
引っ込めたアンの手を無理矢理握ります。暖かな手です。口では嫌がりながらアンも私の手を握り返してくれました。
「はい!これで仲直り完了よ!改めてこれからよろしくね、レイ」
「はい、よろしくお願いしますね、アン。貴女と仲良くなれて本当に嬉しいですわ」
思えば私はどこか魔族であるアン達3姉妹を特別な存在として見ていました。でも目の前にいる少女は私達と何も違いはありません。
「これで何の気兼ねなくあのエテ公をとっちめる事ができるわ。私の仲間の宝物を奪ったんですもの。痛い目に遭わせてやらなくちゃ」
「ありがとう、アン。ところであのモンスターが逃げたのはこちらの方角で合ってますの?」
「任せて頂戴。ほら、そこにも血の跡が、まだ乾いていないわね。かなり近づいて来ているわよ」
アンの指先す方を見ると茂った草に付いたモンスターの血が月の灯りに照らされていました。まだ瑞々しくモンスターがこの場所を通って間もない事がわかります。
「…!?レイ!ストップ!気配を殺して!」
「むぐっ!アン、いきなりどうしましたの?」
突然アンが背後から私の口を手で塞ぎました。私は何が起こったか分からないままアンに言われた通り気配を殺します。
「最悪だわ…あんなヤツが出てくるなんて…レイ、落ち着いてあの茂みの向こうを見て頂戴」
息を殺して話すレイの吐息が耳にかかります。
「…!?アレは!?レッドドラゴン!?」