262 意外な助っ人
「アン…何故こんな時間にこの様な場所に?」
「目が覚めてしまったから散歩していただけよ。文句ある?」
「別に文句などありませんわ。その…見ていましたの?」
「どっかのお姫様が雑魚モンスターに遅れを取るところからしっかりとね。それより何ボサっとしてるつもり?さっさと行くわよ」
散歩していたなんて嘘ですわ。アンの手には杖が握られて額には汗を浮かべています。それに私はアンも夜な夜な野営地の近くで訓練をしている事を知っているのです。きっと今夜も訓練をしていたのでしょう。
「行くって何処へ行くつもりですの?できれば今は1人にしておいて欲しいのですが…」
「あのエテ公を追いかけるに決まってるでしょ?それとも大切な物を奪われて泣き寝入りするつもり?」
「貴女何を言ってるか分かってまして?こんなに視界も悪いのにあのモンスターを追いかけるなんて無理ですわ」
「ふぅん…奪われて泣いちゃうくらい大切な物なのにそんな簡単に諦めちゃうんだ?アンタってとんだ腰抜けね」
本当に嫌な人。でもアンにここまで言われたら引き退る訳にはいきません。
「わかりました、今からあのモンスターを追いかけます。もし朝になっても野営地に戻らなかったら皆にこの事を伝えて下さい。それでは」
「ちょっとちょっと!まさかアンタ1人で行くつもり?バッカじゃないの!?」
モンスターの逃げて行った方角へ踏み出した私の肩をアンが掴みます。私を焚きつけたかと思えば引き留めて…一体何がしたいのでしょうか?
「さっきから何が言いたいのですか!?言いたい事があるならはっきりと言って下さい!」
「あ~っもう!この鈍感女王!私もアンタの大切な物を取り戻すのに協力してあげるって言ってんの!察しなさいよ!」
「えっ…?何故アンが私の為に…?」
面食らってしまいました、私達はお互いを嫌い合ってる筈です。それなのにアンが私に協力してくるなんて…
「いつも強気なアンタが無くして泣いちゃうくらいに大切なモンだったんでしょ?アンタの事は大嫌いだけどそんなの放っておける筈ないじゃない!さぁ行くわよ!」
「ちょっと!引っ張らないで下さいまし!それならユイトや師匠達も起こして付いてきてもらった方がいいですわ!」
「その間にあのエテ公は遠くへ行ってしまうわ。あんな雑魚私とアンタがいれば十分!ほら!ハキハキ歩く!」
アンは私の手を強引に引っ張ってモンスターの逃げた方へとずんずん歩いて行きます。まさかアンが私を助けてくれるなんて思ってもいませんでした。