257 ヒドゥンフィールド
ルナを中心に半透明な魔力の膜がドーム状に広がっていく。これがルナの力の一部なのか?何かが変わった様には思えないが…
「さぁ、これでモンスター共は我らの存在に気づけなくなったぞ。時間は…半日以上はもつであろう」
「本当にこれで大丈夫なのか?俺には何か変わった様には思えないけど。これで油断して襲撃を受けたらシャレにならないぞ?」
「ぐぬぬ…余の力を疑うと言うのか。そうだ、オウルよ。其方は弓が得意であったな?あの飛んでいるドラゴンにちょっかいを出す事はできるか?」
ルナが近くの空を飛んでいた一頭のドラゴンを指差す。一体オウルさんに何をさせるつもりだ?
「少し遠いね…でも矢を当てるくらいなら問題ない。アイツを怒らせればいいのかい?」
「話が分かるではないか。そうだ、あやつを怒らせてくれればそれでいい。余の力がインチキなどではない事を証明したいのだ」
「オウルさんまで乗り気になってしまって…でもまぁルナの力を確かめるにはこの方法しかないか」
「そうと決まれば善は急げだ。皆はもしもの時に備えていてくれ。それじゃいくよ!」
オウルさんが放った矢は一直線に空飛ぶドラゴンへと進み命中した。大してダメージは与えて無いようだがドラゴンは攻撃された事に怒って雄叫びをあげた。
「こっちに向かってくるぞ!ルナ!どうなってるんだ!?」
「慌てるでない。あやつは単に攻撃が放たれた方角へ闇雲に向かって来ているだけだ」
上空からドラゴンが急降下してくる。どうやらレッドドラゴンの様だ。今まで戦ったどの個体よりも大きい、この辺りの主ってヤツか?
「!?様子がおかしいぞ?皆!攻撃するのは少し待ってくれ」
俺達へ向かって急降下していると思ったが何か様子がおかしい。レッドドラゴンは何かを探す様に俺達の上空をぐるぐると旋回し始めた。
「驚いたね…レッドドラゴンの索敵能力はモンスターの中でも鋭い方だ。それがこんなに近くにいる僕達を発見出来ないなんて普通ならありえないよ」
「ただアイツがマヌケなだけじゃ無ぇのか?もう少し試してみようぜ。ほらよっと!」
今度はシグマさんが旋回中のドラゴンへと石を投げつけた。やはりこれもダメージを与えた様子はないがヤツを怒らせるには十分な攻撃だ。ドラゴンは更に怒ったようで口から火を吐きながら滅茶苦茶に辺りを飛び回っている。
「ククク…これで皆も余の力を理解してくれたか?」
「あぁ、これだけ近くに来て俺達の存在に気づいた様子もない。ルナ、お前の力はどうやら本物のようだな。疑ってすまなかった」
「わかってくれれば良いのだ。今日は我が闇の結界の中で十分に休息をとるが良い。フハハハハ!」