256 幻惑
「うぅっ…痛いではないか…尻が2つに割れてしまった。余の様な美少女の尻を叩いて喜ぶとはユイトは変態であったのだな」
「あのなぁ…別に俺だってルナの尻を叩きたくて叩いたんじゃないぞ?その様子だと何故自分がそんな目にあったかまだ分かってないみたいだな?」
俺に叩かれたお尻をさすりながらルナがジト目で見つめてくる。皆の生死が掛かっている状況で力を出し惜しみするとはコイツの中二病にも困ったものだ。
「冗談だ!だからもう尻を叩くでない!これ以上叩かれたら新しい世界が拓けてしまう!」
「じゃあさっきの話を詳しく聞かせて貰おうか?ルナには敵と戦う力が有るって事で良いんだよな?」
「うむ、厳密に言うと戦う力とはちと違うがな。説明するよりは実際に体験してもらった方が早いだろう」
「それってどう云う事…!?レッドドラゴン!?いつの間に!?」
ルナと話していた俺の目の前に一瞬にしてレッドが姿を現した。ルナはどこへ言った?まさかコイツに喰われてしまったのか?
「コイツ!?ルナをどこへやった!?」
「待て!いきなり斬りかろうとするでない!余は無事だ!」
ドラゴンが喋った?何が起こっているか分からず混乱していると目の前のドラゴンはみるみる小さくなっていきルナが姿を現した。今のドラゴンは一体?
「驚いたか?今のドラゴンは余が見せた幻覚だ。我の司る闇の力は相手を惑わせる事にある。直接攻撃する術は持ち合わせていないが中々に強力な力であろう?」
「驚いたよ。ルナの依代のスキルを考えるとひょっとしてとは思っていたんだけど…想像以上だ。今のレッドドラゴンが幻覚だったなんて信じられない」
「クックック、ユイトも余の力を認めた様だな。余の幻惑の力を持ってすればモンスター共から身を隠す事など朝飯前よ」
ルナの幻惑の力を使えば確かにモンスターの襲撃を未然に防ぐ事が出来そうだ。念の為に見張りは必要だが上手くいけば夜中に敵の襲撃で叩き起こされる事も無い。日中の登山だって格段に安全になるだろう。
「なんにせよルナの力がモンスターに通用するか試してみる必要があるな。どうしましょう?少し早いけど今日はもうここで野営をしませんか?」
「そうだね。ルナちゃんの力も試したいし僕達も大分消耗してしまった。今日は早めに休むのも良いだろう」
「おう、俺も賛成だ。さっきのレッドドラゴンにはビックリしたぜ。あの時の俺達みてぇに今度はモンスター共を騙してくれよな、闇の女王ちゃん」
「任せておれ。それでは参るぞ?ヒドゥンフィールド!!」