253 ルナ
「ユイト…君?一体どうしちゃったのかしら?」
呆気に取られた顔でメリッサが俺の顔を覗きこむ。レジェンダリーなんとかさんが泣き出しそうになったのを止める為に咄嗟に話を合わせてキャラを作ったがその代償として俺の心が深刻なダメージを受けてしまった。皆の視線が痛い。
「我が主…そうだとも!余は主の忠実な眷属。これしきの事なんともないぞ!」
「うむ、それでこそ我が眷属。流石は夜の混沌を統べる物レジェンダリー=ダークネス=クイーンだ。しかしこの世界でその名を名乗るのは少し問題があるな…」
こうなればヤケだ。しばらくコイツに話を合わせよう。後ろの方でシグマさんとドロシーが馬鹿笑いしているのが見えたが気にしてはダメだ。
「何故なのだ…ハッ!まさかヤツらもこの世界に!?」
「そうだ、すでにヤツらもこの世界で活動を開始している。貴様がこの世界にいる事がバレると面倒な事になる…」
「機関の連中め…余の力を恐れこの世界にまで手を広げていたとは。全く面倒なヤツらめ。我が主よ、ご命令とあれば余が連中を血祭りにあげてこよう」
はい出ました、中二病御用達の『機関』。何故か中二病に掛かった者は機関と戦ったり機関に追われたりしたがる。コイツもやはり機関と敵対している設定の様だ。
「待て、今はまだその時ではない。連中は貴様の想像以上に力をつけている。しばらくは貴様の存在がバレる訳にはいかないのだ」
「クソッ…連中め。いつのまにそこまでの勢力を…」
「それ故に貴様の名を気軽に呼ぶ訳にはいかなくてな…そうだ、この世界では貴様の真名を名乗るがいい。機関の連中でも貴様の真名は把握していまい」
「余の真名…わかった。我が主がそう言うのならば真名を名乗るとしよう。ルナ、それが余の真名だ」
ルナ、それがコイツの本当の名前か。レジェンダリー=ダークネス=クイーンなんて愉快な名前だとは思っていなかったが最初から本当の名前を教えてくれれば良かったのに。
「わかった、ルナよ。我の事はユイトと呼ぶが良い。後できるだけ今の口調は辞めておけ。どこに貴様の事を知る機関の者がいるかわからなからな」
「わかった、我が主…いやユイトよ。しかし口調については難しいな。出来るだけ努力はしてみるがな」
「それで良い…いやそれでいい。とにかくこれからよろしくな。ルナ」
ルナの頭にポンと手を乗せると顔がみるみる赤くなった。初対面でキスを迫って来たクセにウブなヤツめ。こっちの方がコイツの素なんだろうな。