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252 中二病

「間違い無い我が主よ。余こそが月下の外套に宿し女神。レジェンダリー=ダークネス=クイーンである」


襟首を掴まれたまま少女がドヤ顔を決めた。この子が月下の外套の女神なのは間違い無いとして何て呼びにくい名前なんだ。長すぎるぞ。


「え~っと…レジェンダリーなんとかさん?もうちょっと呼びやすい名前は無いのか?ほらあだ名とかニックネームとかさ?」


「レジェンダリー=ダークネス=クイーンだ!ちゃんと覚えるが良い!高貴なる闇の女王にしてこの世の全ての闇を統べる者と云う意味だぞ!」


「めんどくさいヤツめ…もしかしてコイツはアレなんじゃないか?」


レジェンダリー=ダークネス=クイーンと名乗った少女の姿を見ると不思議な点が多々ある事に気付いた。眼帯をはじめ右腕にグルグルと巻かれた包帯、着ている服は所謂ゴスロリってヤツか?更に名乗った名前に妙に芝居掛かった口調、そこから導き出される答えは…


「間違ってたらごめん、お前もしかして中二病ってヤツか?」


俺にも経験があるがこの年頃の子供はやたらと闇とか眼帯に憧れる事がある。この子は何年後かに当時を振り返ると死にそうな程恥ずかしくなってしまう危険な病気に羅漢している可能性は高い。


「な!何を言うのだ我が主よ!余は本当に闇の女王なんだぞ!凄いんだぞ!」


「図星か、中二病って言葉が分かるって事はまだ後戻りができる。忘れた事にしてやるからすぐにそのキャラ作りを辞めた方がお前の未来の為だ。これは中二病の先輩からの助言だと思ってくれ」


「中二病?何の病気か分からないけどよく見ると腕に包帯を巻いてるわね。治してあげるからその包帯を取ってくれないかしら?」


「やめろ!包帯に触るでない!この包帯は大いなる闇の力を…辞めて!無理矢理解かないで!」


メリッサは本気で少女が怪我をしていないか心配している様だ。決めた、今後コイツが面倒な事を言い始めたらメリッサに丸投げしよう。お姉ちゃんの前では中二病も形無しだ。


「あらあら、どこも怪我していないようだけど…痛みはあるのかしら?」


「大丈夫だメリッサ。コイツの掛かっている病気は肉体で泣く心に影響する物だからな」


「うぐっ…なんなのだ、なんなのだ~皆して余を馬鹿にして…」


マズイ、ダークなんたらが今にも泣き出しそうだ。これから仲間になるのに最初がコレじゃあ後々禍根を残す事にもなりかねない、使いたくは無かったが最終手段だ。


「フハハハハ、この様な事で涙を流すのかレジェンダリー=ダークネス=クイーンよ。その程度で我の眷属を名乗るとは片腹痛い。貴様はその様な弱き者ではない筈だ」

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