248 味噌汁
俺達を迎えに来たアンと共に昨日設営した野営地へと戻る。少し歩くと辺りに食欲を刺激する匂いが漂って来た、朝食の匂いだ。
「お帰りなさいユイトさん、毎朝訓練お疲れ様です。朝ご飯ができてますよ」
「サクヤこそ毎朝ありがとうな。動いてきたからお腹ぺこぺこだよ。今日は何を作ってくれたんだ?」
「昨日シグマさんが釣ってきた魚をシンプルに塩焼きにしました。後は街で買い溜めしたお米とユイトさんの好物のお味噌のスープです」
机の上を見ると炊きたてのご飯と共に脂の乗ってそうな川魚がいい具合に焼かれて湯気をたてている。グツグツと沸騰している鍋の中は味噌汁だろうか。まさに純和風の朝食、異世界での食事とは思えない。
「お帰りユイト、そろそろご飯が出来るってんでアンに迎えにいかせたんだ。早く席に付けよ、ウチはもう腹ペコで倒れてしまいそうだよ」
「ドロシーちゃん、私達は居候なんですから少しは遠慮しないと…」
「姉貴は気を使いすぎなんだよ、ユイト達だって遠慮はすんなって言ってくれただろ?」
トロンとドロシーのやり取りを見ながら自分の席に着く。魔族3姉妹もすっかり俺達に溶け込んでしまったな。
「待たせて悪かったな。トロン、ドロシーの言った様に俺達に遠慮する事なんてないんだぞ?朝食だって先に食べてくれてて良かったのに」
「そうはいきません、食材だってユイトさん達の手持ちの物を食べさせてもらっている訳ですし」
「食料は余裕があるから気にするな。さぁ、皆揃ったんだから早く食べよう。冷めてしまったら折角のご馳走が台無しだ、いただきます」
サクヤの注いでくれた味噌汁に口を付ける。今日の味噌汁はワカメと玉ねぎか。欲をいえば豆腐も欲しいがこの世界に来てから豆腐を見た記憶がない。今度街に行った時にでも探してみようかな。
「ん…?なんだかいつもと味が違うような?コレはコレで美味いけど作り方を変えたのか?」
「実は今日のお味噌はトロンちゃん達3人が作ってくれたんですよ。前からお料理に興味があったみたいです」
「そうか、料理を作るのは初めてだったのか?凄いじゃないか、サクヤの味噌汁と比べても遜色無い。美味しいよ」
「そ、そうか?って言ってもウチらはサクヤの言った通りに作っただけなんだけどね」
お世辞ではなく本当に美味い。いつも料理を作っているサクヤの監修があった事を差し引いても初めての料理にしては十分だ。
「なんだ、このスープはドロシー達が作ってくれたのか?男勝りだと思っていたが中々女らしいところもあるじゃ無ぇか?これならいつでも嫁に行けるな、どうだ?俺の嫁になるか?なんつってな!ガハハハハ!」
バシバシとドロシーの肩を叩きながらシグマさんが笑う。ドロシーは顔を真っ赤にして俯いてしまった。