244 海竜の鱗
ザラキマクで本人から貰った海竜様の鱗。これが有れば離れていても海竜様と意思の疎通ができる。ザラキマクを離れてから使うのは初めてだか上手く機能してくれるだろうか。
『海竜様、聴こえますか?俺です、ユイトです』
海竜様の鱗へと意識を集中し頭の中で話しかける。すると鱗の放つ光が少しだけ強くなった。
『おぉ、ユイトか。あれから連絡が無いものだから無事でいるか心配していたぞ。変わりはないか?』
頭の中に海竜様の声が聞こえてきた。ドラゴンロックから海竜様のいるザラキマクの海まではかなりの距離が離れているが問題無かった様だ。
『心配してくれてありがとうございます。俺も仲間達も元気にしています。海竜様の方もお元気そうでなによりです』
『うむ、して我に何か用か?其方の事だ、意味も無く我に連絡した訳でもあるまい』
『えぇ、少し海竜様にお聴きしたい事がありまして。その前に海竜様の声を俺の近くにいる者にも聴こえる様にする事はできませんか?』
「…問題ない、これで我の鱗から直接声が聞こえる様になった筈だ。其方の近くにいる者達の声も我に届く」
手に握っていた海竜様の鱗から直接声が響く。これで皆にも海竜様の声を届ける事が出来る。
「あれ…?シグマさんにオウルさん?どうかしましたか?レイまで何を固まってしまってるんだ?」
皆の様子をみるとシグマさん達3人が目をぱちくりしながらその場でフリーズしてしまっている。
「ユイト…その声の主は本当に海竜様なのか?」
「ちょっと理解が追いつかない…君が海竜様と出会った話は聞いたけでいざ伝説の存在を目の当たりにすると流石に緊張してしまうよ」
「私も混乱してしまいますわ。海の守護神たる海竜様…この声の主が海竜様なのですね」
そうか、この世界に生まれ育った人間にとって海竜様は伝説上の存在だったな。俺が元いた世界で言えば神話に出てくる神様の声が突然聴こえて来た様な物だ。それは訳が分からなくなってしまうだろう。
「初めて耳にする声だな、我は其方達が海竜と呼ぶ存在。創造神様の眷属である」
その言葉を聴いたシグマさん達3人は更に混乱した様だ。レイなんか鯉の様に口をパクパクしてしまっている。
「とりあえず挨拶はこの辺りで…本題に入りますが海竜様に邪竜ルシオンと云う存在について知っている事が有れば教えて欲しいんです」
「…ふむ…何か訳がある様だな。あの者の名を耳にするのも久方ぶりだ。確かに我は邪竜ルシオンについて知っている」