242 落ちこぼれ
「…とまぁこれが世の中に広まっている邪竜ルシオンの話だよ、細かいところは色々と違う部分があるかもしれないが大まかな流れは同じだと思う」
パチパチと焚火にくべた薪が弾ける音が聞こえる。オウルさんの語る邪竜ルシオンの話に聞き入った俺達は何も言えずに只話の余韻に浸っていた。
「お話を聞かせてくれてありがとうございました。なんて言っていいか…この話は本当に只の御伽噺ではないんですか?」
「あぁ、話に出てきたエルフの女、それが僕のご先祖様だって伝えられてるんだ。正直言うと僕もこの話が本当にあった出来事なのか半信半疑なんだけどね」
「そうですか…それでルシオンが封印された場所がこのドラゴンロックなんですか?」
「言い伝えではそう伝えられている。でも詳しい事は何もわからないんだ。恐らく興味を持ち封印を解こうとする者が現れない様にする為ワザと詳しい事は伝えられてないんだろうね」
人間やエルフ、それに神様の眷属と互角に渡り合ったと云う邪竜ルシオン。そんな存在の封印が解かれでもしたら大変だ。それを防ぐ為に昔の人々はワザと詳しい情報をボカし後世に伝えたのだろう。
「そんな大昔の怪物の話をなんでアン達は知っていたんだ?詳しい事を知っているなら教えて欲しい」
「その…私達も詳しい事は知らされて無いっていうか…あの…」
アンが目を泳がせながら言い淀む。俺達に全面的に協力すると約束をしたがこれでは話が違う、知っている情報があるならば聞き出さなければ。
「アン、俺達はお前達の身の安全を保障する代わりに情報を教えてもらうって約束だったよな?」
「違うの!別にアンタ達との約束を破るつもりは無いわ。その…私達3人は所謂落ちこぼれ扱いされていたのよ!」
「落ちこぼれ扱い?それがこの件と何の関係があるんだ?」
アンが言い淀んだのは自分達が落ちこぼれ扱いされていた事がバレるのを嫌った為の様だ。しかし話が繋がらない、何故落ちこぼれが世界有数の危険地帯であるドラゴンロックへ派遣されたのだろうか。
「それはウチから説明するよ。アンが言った通りウチら姉妹は魔族の間で落ちこぼれって言われていたんだ。そんなウチらに下された命令、それは世界中の真偽不明の話に出てくる怪物の調査だった」
「色々な胡散臭い話に出てくる怪物やモンスターを姉さん達と3人で調べて来たわ、見事に全部外れだったけどね」
「つまりお前達は落ちこぼれ扱いされたからダメ元で強力なモンスターの調査を命じられた訳か。存在するかどうかもわからないモンスターなら別に発見できなかったとしても問題ないからな」