240 邪龍
「はぐはぐ…まだです、まだ食べられます、なんて美味しいお肉なんですか!?」
「姉貴、ウチの育てた肉を勝手に食べるなよ!せっかく楽しみにしてたのに…」
「ドロシー姉さん、私の分が焼けたから半分分けてあげるわ。はい、これどうぞ」
3姉妹が網の上で焼かれている肉にむしゃぶりつく。今日の夕飯は時間もなかった為簡単に焼肉をする事になった、肉はもちろんシグマさんが狩ったレッドドラゴンの物だ。
「ドラゴンの肉ってこんなに美味かったんだね。あの臭い液体を持つ生き物の肉とは到底思えないよ」
ドロシーのヤツめ、皆が思っていたが口に出せなかった地雷を簡単に踏みやがった。肉に手を伸ばしていた皆の手が一瞬とまる。
「ドロシーちゃん?TPOって言葉を知ってる?そんな空気を読めない子だったなんて姉として恥ずかしいわ…」
「ご…ごめんって姉貴、今の言葉はナシ!ノーカン!あ~ドラゴンの肉は最高だね!」
「気に入ってくれた様でなによりだ、肉は幾らでもあるから好きなだけ食べて欲しい。ドラゴンで思い出したんだが君達がドラゴンロックへ来た目的を教えてもらえるかい?」
すっかり俺達と馴染んでしまったがこの3姉妹は魔族だ。危険地帯であるドラゴンロックへわざわざ来たという事は何か目的があったのだろう。
「そうね…ウチらの知る情報は全て話す約束だからね」
「姉さん達、その話は私がするわ。私達3人がドラゴンロックへ来たのはあるドラゴンの存在を確かめる為よ」
アンの話を聞いたオウルさんがやはりといった顔になる。何か心当たりがあるようだ。
「やっぱりそうか…君達3人は邪龍ルシオンを探しにこの山へやって来たんだね」
「邪龍ルシオン?何言ってんだオウル、あれは御伽噺にでてくるドラゴンじゃねぇか?」
「そうですわオウル師匠、私も幼い頃何度も父上からルシオンの話をしてもらいました。あれは子供を寝かしつける為の話に出てくる存在ですわ」
邪龍ルシオン、俺はこの世界に来てあまり長くない為かその存在は知らない。しかしシグマさんとレイの反応を見るに有名な話の様だ。
「確かに今では御伽噺として語られているがあの話は太古の昔に実際にあった事だとエルフの間では語り継がれているんだ」
「あの、もし良かったらどんな話か教えてもらえませんか?俺と仲間達はその話を聞いた事が無くて…」
「ウチらもその話を聞きたいね。邪龍ルシオンは強い力を持ったドラゴンって事しかしらないんだ」
「そうだね、皆もヤツがどんな存在かを知っていた方が良い。この話は太古の昔、まだ神様が人間やエルフを世界に創った頃の話なんだ…」