239 契約成立
「姉貴…わかったよ、ウチもシグマ達に協力する事を約束する」
「姉さん達が協力するなら私もよ。その代わりキチンと私達を守ってよね」
トロン達3姉妹の意見もまとまった様だ、これで契約は成立する。まさかこんな話になるとは思ってもいなかった。
「OK、これで契約成立だね。それじゃまずは君達の身体を自由にしよう、そんな状態で追手に襲撃されたら良い的だからね」
「そうですね、俺に任せて下さい。3人とも少し動かないでいてくれよ…っと。これで大丈夫だ、もう縄は切った」
3人の身体を縛っていた縄を神速の抜刀術である無拍子で切断した。3人は何が起きたか分からない表情でキョトンとしている。
「はわわ…いつの間にか縄が切られています」
「ユイトって言ったか?お前がウチらの縄を切ってくれたのかい?いつ剣を抜いたか分からなかった」
「流石は私を倒した男ね、これくらいやってくれなきゃ困るわ」
ちょっと待て、俺はアンと戦ったつもりはないぞ?お前は勝手に風呂場でコケて気を失っただけじゃないか?
「これで3人とも俺達の仲間って事でいいんだよな?俺は仲間の事は何があっても守るぜ。これからよろしくな」
「そうだね、シグマの言う様にこれから僕達はしばらくの間行動を共にする仲間になる。その為にも君達から聞きたい事が沢山あるんだけど…」
オウルさんが話の途中で空を見つめ言葉を止めた。気がつけば太陽が西の空に沈みかけていた、もうすぐ夜型やってくる。
「そろそろ晩飯の準備をしねぇと間に合わない時間だな。よし、3人とも腹減ってるだろ?話は飯を食いながらにしようぜ」
「あの、私が言うのもなんですが縄を解いた事といい私達を信用し過ぎじゃないですか?」
「シグマは昔から人間を見る目だけは確かでね、そのシグマが君達を信じる事にしたんだ。大丈夫に違いない」
「なんて言うかウチらの仲間とは大違いだね、アンタ達はお互いを信頼しあっている事が見ていてわかるよ」
「おう、仲間を信じる事は冒険者として基本中の基本だからな。今日からはお前達も俺の仲間だ、信じてるぜ」
シグマさんがバシバシとドロシーの肩をバシバシと叩くと彼女の顔が嬉しそうに歪む。意中の相手に信じていると言われ余程嬉しかった様だ。
「人間は私達魔族の敵で悪いヤツらだと教えられていたからなんだか複雑な気分だわ」
ドロシーの姿を見ながらポツリとアンが呟く、きっと彼女達にとって今日は人生の転換期になる筈だ。色々と思う事もあるだろう。
「人間にも魔族も良いヤツもいれば悪いヤツもいる。とりあえず俺はお前達の事をそんなに悪いヤツらじゃないって思ってるよ」
そう言った俺の顔を見つめながらアンは照れ臭そうに頷いた。




