238 取引
「私は貴方達に全面的に協力する事を約束します。代わりに貴方達は私達の命を守ってくれませんか?」
トロンが持ちかけて来た取引、それは情報と引き換えに自分達の身の安全の保障だった。
「命を守るか…ちょっと穏やかな話じゃねぇな。お前さん達の仲間ってのはそんなに容赦の無ぇ連中なのか?」
「はい…裏切り者や命令違反を犯した者には間違い無く追っ手が差し向けられます」
「以前パフィン村を襲った女魔族を倒した時にも彼女を追って仲間が現れました。確かにアイツはあの時女魔族を始末しに来たって言っていたな…トロンが言っている事は本当だと思います」
「なるほどね、でもドラゴンロックにいる魔族は君達3人だけじゃないのかい?裏切った事なんて内緒にしておけばバレないと思うけど…」
オウルさんの問い掛けに3姉妹は揃って首を横に振る。この山に彼女達以外の魔族がいるのだろうか。
「私達魔族を統括している方がいるのですが彼の前では私達は嘘をつけないんです。仲間の元に戻れば私達は間違いなく彼に会う事になります、そうすれば必然的に貴方達と何があったかもバレてしまうでしょう」
「そいつは厄介だな…どうするよ?俺はこの嬢ちゃん達の申し出を受けてあげたいんだが…」
「助けを求める者を突き放す様な真似はできませんわ。私は彼女達を助けてあげたいと思います」
「そうだね、殺されると分かっているのを放置しておくのも可哀想だ」
オウルさんがチラリと俺に目配せをして来た。俺の意見を求めているようだが答えは決まっている。
「俺も彼女達を守る事に異議はありません。サクヤ達はどうだ?皆の意見も聞かせて欲しい」
「命を狙われるって知った以上知らんぷりはできません。私も賛成です」
「おけ、守る事なら私に任せて」
「このまま死なれたら目覚めが悪いものね、私も問題ないわよ」
「もちろん私も賛成よ、魔族にだって失われて良い命なんてあるはずがないもの」
「反対なんてする筈ないよ、ボクもあの3人を助けてあげたいんだ」
多分俺の仲間達は彼女達を守る事に反対しないと思っていたがその通りだった。この場にいる全員が彼女達を守る事に賛成した事になる。
「君達姉妹を守る事に反対する者はいないようだ。本当に身の安全を保障すれば僕達に協力してくれるのかい?」
「私の命に賭けて誓います。だから妹達だけはなんとしても守ってあげて下さい、私の知っている事なら全て話します」
妹を守る為ならなんでもすると云う強い意志をトロンから感じる。愛する者を思う気持ちは人間も魔族も違いは無い様だ。