237 3姉妹の目的
「ひぐっ…ひぐっ…何なんですかあの臭いは…世の中にあんな凶悪な臭いを放つ物なんて存在しちゃいけません…」
「泣き止んでくれよ姉貴…猛烈な臭さだったな、まだ鼻の奥にあの臭いがこびりついてる気がするよ…」
泣いているトロンをドロシーが慰める。彼女達がこんな風になってしまった原因はアンの尋問にも使われたドラゴンの胆汁のせいだ。
「姉さん達…気持ちは分かるわ、もし自分の身体からあんな悪臭がする様になったらなんて想像しただけで死にたくなるもの」
「本当にあの鬼畜エルフはなんて事を思いつくんだよ…ウチらなんかよりよっぽど悪辣だ」
初めは頑なに自分達の情報を喋ろうとしなかった2人もオウルさんの尋問術の前には無力だった。あの凄まじい臭いがする液体Xは女性への尋問に効果抜群だ。
「さぁ、これで3姉妹仲良く話をしてくれる事になったね。綺麗なお嬢さん達とお話が出来るなんて僕はとても嬉しいよ」
ドラゴンの胆汁をどこかへしまったオウルさんが戻ってきた。心から嬉しそうな顔で身動きが取れない3人の前に座り込む。
「それで何が知りたいんだよ?約束は約束だ。アノ危険物をウチら3人に使わないなら知っている情報を話す」
「そうだねぇ…君達3人がこの山へ来た本当の目的。それを教えてくれないかい?」
「そ…それは…」
3人の中で一番ハキハキとしていたドロシーが目を泳がせながら口をつぐむ。余程言いたく無い事の様だ。
「…わかりました、お話します。でもその前に私達ともう一つ約束をしてくれませんか?」
先程まで鼻水を垂らしながら泣いていた長女のトロンが何か決意した顔でオウルさんに話かける。
「どんな約束だい?内容によるけど話してごらんよ」
「私達がこのドラゴンロックへ来た理由を貴方達に話した事がバレれば私達3姉妹は仲間から裏切り者として処分されてしまいます…」
「姉貴!待て!何を約束するつもりだ!?」
「トロン姉さん!何を考えているのよ!?」
トロンの話を遮る様にアンとドロシーが叫ぶ、ドロシーは2人の顔を見つめ優しく諭す様に話を続ける。
「ドロシーちゃん、アンちゃん。良く聞いて欲しいの、私達はこの人達に捕まった時点でもう元には戻れなくなってしまった。もし何も話さないで解放されてもアノ方達はそんな事を信じない。裏切り者として殺されてしまうのは目に見えているわ」
裏切り者は生かしておかないって訳か…魔族の上下関係は良く分からないが中々容赦の無い関係の様だ。疑わしきは罰する、それが彼女達の掟なのだろう。