234 真っ向勝負
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
気合いの入ったドロシーの叫びが辺りに響く。同時に彼女の掌に周囲の魔力が集まっていくのがはっきりと感じ取れた。
「これは…周囲に漂う魔力が全て彼女に集まっている?」
オウルさんが目を細め怪訝な顔で呟く。目視で確認できる程の濃密な魔力、その破壊力はどれ程になるのだろうか。
「この技は周囲の魔力濃度が高ければ高い程威力を増すのさ。さっき姉貴達が派手にドンパチやってくれたおかげでこの辺りの魔力濃度はバッチリだよ」
「純粋な魔力による攻撃が嬢ちゃんのとっておきって訳か、その若さでこんな芸当が出来るなんて大したもんだ」
純粋な魔力による破壊、この世界にきて間もない頃に一度だけ経験した事がある。リザードマンの巣を破壊する為に魔核を崩壊させた時だ。確かに今のドロシーからはあの時と同じ魔力を感じ取れる。
「オウルさん、幾らシグマさんが常識外れだって言っても少しマズくないですか?俺は純粋な魔力による破壊力を身を以て知っています、あの破壊力は驚異的でした」
「大丈夫、アイツの心配はするだけ無駄だよ。それよりユイト君も純粋魔力の破壊力に晒されて生きているなんてシグマの事を常識知らずなんて言えないと思うよ」
心配するだけ無駄か…確か前にも同じ事を言っていたな。シグマさんとの付き合いはオウルさんの方が断然俺より長い、ここはオウルさんの言う事を信じよう。
「これだけ魔力が溜まれば十分だね…いくよオッさん!」
「応っ!いつでも来やがれ!!」
「魔闘奔流波ッッッ!!」
ドロシーから放たれた純粋魔力による破壊の波。その純白の破壊の力が大地を抉りながらシグマさんに襲いかかる。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!これで終わりだぁぁぁ!!」
マズい、俺が想像していたよりも凄い威力だ。攻撃の余波で周囲の木々がなぎ倒され着弾点であるシグマさんのいた場所は土煙で何も見えない。
「シグマさんっ!!メリッサ!治療の準備だ!これじゃ幾らシグマさんでも無事じゃ済まない!」
「了解よ!死んでさえいなければ絶対に助けてみせるわ!」
駆け出そうとした俺との肩を誰かが掴む。振り返るとオウルさんが首を横に振っていた、どう云う意味だ?まさかもうシグマさんは…
「慌てなくても大丈夫だよ、さっきも言ったけどシグマの事は本当に心配するだけ無駄なんだ」
「でも!流石に今の攻撃はマズいです。早く治療しないと手遅れになります!」
「うーん、本当に大丈夫なんだけどなぁ…ほら、土煙が腫れてきた。アレを見てごらんよ」