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232 身体強化

「おおっと!?やるじゃねぇか嬢ちゃん!危うくいいヤツを1発もらっちまうところだったぜ」


「オッさんこそ想像以上だよ。いまのは完全に決まったと思ったんだけどね」


超加速し飛び蹴りを放ったドロシー、常人では目で追えない様な疾さでの攻撃だった。しかし流石は最強と呼ばれる男、シグマさんはドロシーの飛び蹴りを腕で防ぎ弾き飛ばした。


「正直油断してたぜ。まさか嬢ちゃんがこんなにすばしっこいなんて思ってなかったからな、それにさっきの蹴りも凄ぇ威力だった」


「それはウチの使った身体強化のおかげさ。ウチは姉貴みたいに魔法が得意じゃない代わりに魔力を自分の身体能力の強化に使うのが得意だからね」


「へぇ、世の中まだまだ俺が知らねぇ技を使うヤツがいるもんだな。これだから冒険者はやめられねぇ」


魔力を直接身体能力の強化に使う技か。俺の鬼神降臨に通じるものがあるな、出来る事ならこの技を覚える事は出来ないだろうか、鬼神化と組み合わせれば俺の戦闘力を飛躍的に高めることが出来そうだ。


「オッさんみたいな強いヤツに褒められるのは嫌な気がしないね、でも手加減はしないよっ!」


再びドロシーがシグマさんに襲いかかる。高速で拳や蹴りを次々と繰り出すがシグマさんもその全ての攻撃を難なく捌いている。


「ほらほら、この程度じゃ俺に1発も入れられねぇぞ?そろそろこっちも反撃させてもらうとするか」


「!?…危ない危ない、あのラッシュを全部捌きながらカウンターを打ってくるなんてどんな反射神経をしてるんだよ?」


猛攻の隙をついてシグマさんの拳がドロシーの頬を掠る。紙一重で避けた様だが頬に一筋血が出ている、今のがまともに当たっていたら勝敗は決していただろう。


「打撃技じゃダメージは与えられないか…それならっ!?」


ドロシーはそう言い放つと突き出されていたままのシグマさんの拳にしがみついた。腕の付け根を足で挟みシグマさんの肘の関節に負担を掛けている。この技には見覚えがある、確か現実の世界で腕十字固めって呼ばれていた技だ。


「ん?どうした嬢ちゃん?いきなり俺の腕に抱きついてきたりして」


「クソっ…予想はしていたけど全くダメージを与えられないなんて…」


腕に纏わり付いたドロシーなど居ないかの様にシグマさんは悠々と地に立っている。本来なら体重と痛みに耐えられるずに地に倒されているだろう。


「荒削りだけど攻撃を仕掛けるセンスは中々だな。普通の人間ならこの攻撃で腕を折られていただろうよ」


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