230 長女トロン
「トロン姉さん!!」
「姉貴っ!!」
少女の胸をオウルさんの放った閃光が貫く。その光景を目の当たりにした2人の少女の悲鳴が響き渡る。
「嫌っ!!嫌よこんなの!姉さん返事をして!」
「クソっ!よくも姉貴を…許さねぇ!お前だけは絶対に許さねぇ!」
2人の少女がオウルさんを睨みつける。目の前で肉親が命を奪われた、敵同士とはいえ少し少女達に同情しそうになる。
「おいおい、あまり怖い顔で睨まないでくれよ。僕はその子の命を奪っていない、近づいて確認してみるといい」
「本当か!?嘘だったら承知しないぞ!」
「ドロシー姉さん、私も確認する!」
オウルさんの攻撃を受け倒れた少女にドロシーと呼ばれた少女が近づく。胸に耳を当て心音を確認しているようだ、アンはその光景を見ながらぐるぐる巻きにされた身体でもがいている。
「生きてる!姉貴が生きてる!でもどういう事だ?アンタの攻撃は確かに姉貴の胸を貫いた」
「ミストルティンは実体でなく魔力を撃ち出す魔弓なんだ。そのこに放った攻撃は麻痺の効果を持たせた攻撃、半日もすれば意識を取り戻して動けるようになるさ」
「なんて言うか…ありがとよエルフの兄さん。魔法の事はからっきし分からねぇけど兄さんがその気になれば姉貴を殺す事なんて簡単にできた筈だ」
よく見ると倒れ込んだ少女の身体が痙攣している。どうやらオウルさんの言っている事は本当の様だ、実を言うと先程のドラゴンの胆汁の件で俺はオウルさんの事を血も涙もない鬼畜だと思っていた。
「僕だって出来る事なら無駄な殺生はしたくたないからね。魔族の君達が家族や仲間を思う気持ちを持っている事を知った今なら尚更さ。この子との勝負は僕の勝ちって事で異存はないかい?」
「勿論だ、圧倒的な力の差を見せつけられて更に命を奪わないでくれた。この結果に文句を言ったら女が廃るってもんだよ」
「物分かりが良くて助かるよ。ところで残った君はどうするんだい?こちらとしては降参してくれればありがたいんだけど…」
これでアンと3姉妹の長女トロンはこちらの手に堕ちた。残るは次女のドロシーだけだ。
「気の弱い姉貴がここまで女を魅せたんだ。ウチだけ大人しく降参なんてできないね、それにそこのオッさんとは前々から一度やり合って見たかったんだ」
突然話を振られたシグマさんがキョトンとした顔自分を指差す。さては完全に自分に話が飛んでこないと油断していたな。
「そういやそっちの元気良い嬢ちゃんだけは毎度毎度逃げる時に渋々って顔をしていたな…若い娘さんからそんなに熱烈にアプローチされたら断るわけにはいかんだろう」