228 ミストルティン
「私の魔法はまだまだこんなものじゃありません!たった1発防いだくらいで勝ち誇らないで下さい」
「勝ち誇ったつもりは無いけど気に障ったなら謝るよ、只これだけは言っておく。君では決して僕に勝つ事はできない」
涼しい顔でオウルさんが言い放つ。対する少女は自分の魔法がいとも簡単に防がれた事にショックを受けている様だ。
「確かにそうかも知れません…でも妹を救う為には簡単に引き下がる訳にはいかないんです!」
「妹を守る為にそこまで本気になれるとは…今まで僕は君達魔族と云う存在を誤解していた様だ。愛する者の為になら自らの危険も厭わない、僕達と何も変わらないじゃないか」
再び少女の魔力が高まっていく、先程よりも強い力だ。これが彼女の本気か、気弱そうに思えても流石は魔族、普通の人間の放つ魔力量とは比べ物にならない。
「だから舐めないで下さいって言ってるんです!!これならどうです!?ナイトメアボム!!」
少女から放たれる無数の黒球、サクヤの鬼火弐式に良く似た攻撃だ。数の勝負ならサクヤの鬼火弐式に軍配があがるが1発1発の威力なら少女の魔法の方が上だろう。
「1発でダメなら複数発の同時攻撃か、悪い考えじゃないが僕の矢が一本づつしか撃てないと思っているなら大間違いだ」
涼しい顔のままオウルさんの弓から放たれたる、1回で3本放たれる矢が少女の黒球を次々と打ち消していく。
「な…なんて人なんですか、あれだけの数の魔法を全部打ち消してしまうなんて…でもこれで形成逆転です、貴方の矢は全部撃ち尽くしてしまった様ですね」
「僕に矢筒の全部使わせた相手は久しぶりだよ。それだけ君の魔法は素晴らしかった。でもそれで自分が優位に立ったと勘違いしない方が良い」
「強がっても無駄です、確かに私も消耗してますけどまだ魔法を使う事はできます、でも貴方には魔法を打ち消す為の矢はもうありません」
やれやれと肩を竦めたオウルさんが背中に背負った矢筒を取り外す。これは降参の意思表示だろうか、確かに少女の言う通り矢を切らしたオウルさんではあの魔法に対抗できない。
「確かに僕が普通の弓しか持っていなければ君の圧倒的優位に違いない。でも僕の愛弓が一つだけだと言ったつもりはないよ?来い!ミストルティン!!」
オウルさんが右手を天に掲げるとその手が眩く光り輝きその光がやがて1本の弓の形に収束した。
「新しい弓?一体どこから取り出したんですか?でも幾ら弓が有ったところで矢がなければ意味がありません、覚悟して下さい!」