227 エルフの勇者
「さて、僕の相手は君がしてくれるのかい?お手柔らかに頼むよ」
「はわわわ…こっ!こちらこそお手柔らかにお願いします!」
オウルさんが一歩前へと歩み出て爽やかな笑顔をオドオドした魔族の少女へ向ける。男の俺でも見惚れてしまいそうになってしまった、これだからイケメンはタチが悪い。
「さっきの魔法は君の仕業かい?中々の威力だった。素直に凄いと感心していたんだ」
「あ、ありがとうございます。私は体術は全然ダメだけど魔法だけは少し自信があって…いやいや自信があるって言っても少しだけですよ?調子に乗った様な事を言ってごめんなさい!」
「君は十分に凄い力を持っているんだ、誇ってもいいと思うよ。だけど敵である僕に自分が体術が苦手だと知らせるのは頂けないな、敵に与える情報は最小限にする様に気をつけた方がいい」
本当にこの魔族の少女は戦えるんだろうか、さっきから謝りっぱなしで挙げ句の果てには敵であるオウルさんにダメ出しされている。
「姉貴!何相手に謝ってるんだ!姉貴は凄ぇヤツだ!ドーンと一発その色男にデカイやつをかましてやりな!」
「ドロシーちゃん…そうね、私は貴女達のお姉ちゃんだもの、情けないところばかりは見せられないわ!」
「魔力が高まっていく…いやはや凄い魔力量だね、ラッカ姉さんと良い勝負だ」
仲間の声援を受けオドオドしていた少女の纏う空気が変わった。彼女を中心に魔力の奔流が巻き起こる、気弱そうな少女の仕業だとは信じられない凶悪な力が荒れ狂う。
「妹を貴方達から救い出す為なら手段は選びません!死んでも恨まないで下さいね!ナイトメアボム!!」
「闇属性魔法か…これ程までに強力な闇魔法を見るのは何十年ぶりかな?」
「そんな余裕ぶってていいんですか?この魔法は全てを飲み込む漆黒の爆炎、行けっ!あの人をやっつけちゃえ!」
少女の放った拳サイズの黒球がオウルさんへと一直線に進む、あの魔法は先程俺達への不意打ちに使われた魔法だ。
「君の闇魔法には興味があるけど大人しく受けてあげるには危険すぎる魔法だ、悪いけど撃ち落とさせてもらうよ」
オウルさんが目にも見えない早業で背中に担いだ弓を抜き矢を放った、まさに一瞬の出来事だ。放たれた矢は迫り来る黒球へと突き刺さる。
「ウソ…なんで魔法がただの矢に相殺されるの!?ありえないわ!」
「確かに普通の矢だったら君の魔法に触れた瞬間消滅していただろうね。あの矢を放つ瞬間僕の魔力を込めて放ったんだ、エルフの戦士の基本技さ」