226 姉妹
近くの茂みから魔力の高まりを感じる、魔法が放たれる前兆に間違いない。皆を守る為に神甲アイギスの力を展開するとほぼ同時に俺達目掛け魔法が放たれた。
「誰だ!不意打ちなんて汚ねぇ真似しやがって!喧嘩がしてぇなら正面から掛かって来やがれってんだ!相手してやる!」
間一髪イージスの展開が間に合った。シグマさんが魔法の放たれた茂みを睨みつけ怒声を放つ。
「はわわわ…ど、どうしようドロシーちゃん!?あの人達凄く怒ってるみたい」
「姉貴の魔法を不意打ちで喰らって無傷なんてあのオッさん達やっぱりバケモンだな、ちょっとは隙が出来る事を期待してたんだけど参ったなこりゃ」
茂みから2人の少女が姿を現わす。普通の少女では無い。頭からアンのモノに似た角を生やしている、魔族か。
「ドロシー姉さんにトロン姉さん!助けに来てくれたのね!?」
ミノムシ状態のアンが2人の少女の姿を見てピョンピョンと跳ねる。どうやらこの2人がアンの仲間、いや姉妹の様だ。
「やい!人間ども!私達の可愛い妹を返しやがれ!嫌だって言うなら只じゃおかないぞ!」
「アンちゃん!お姉ちゃん達が助けに来たからもう大丈夫よ!」
「仲間を助けに来たか、尋問はひとまず中断だ。ユイト君達はこの子を見張っておいてくれ、あの2人は僕とシグマが相手をしよう」
オウルさんがポンと俺の肩を叩き歩み出る。不意打ちを受けたのにまるで慌てた様子が無い、冷静そのものだ。
「いつも3人つるんで悪さしてると思ったらお前ら姉妹だったのか?それじゃ妹を心配する気持ちに免じてさっきの不意打ちは無かった事にしてやるよ、どこからでも掛かって来い」
「へっ、いつもいつもウチらの邪魔ばかりしやがって。オッさんに勝てる気はしないけどウチの命を懸けてでも妹だけは助けだしてみせるよ」
「シグマ、分かっているだろうけど命を奪うまではしなくていい。もしできるなら生け捕りにしてくれ、情報源は多いに越したことないからね」
「あいよ、お前もぬかるんじゃねぇぞ?普段俺達から逃げ回ってるコイツらが自分から姿を現した。覚悟を決めた証拠だ、今までとは別人と思え」
人類最強クラスの2人が魔族と対峙する。状況は2対2、数の上では五分だ。
「ウチはあのゴツいオッさんと闘る、姉貴は男前のエルフを頼む。危なくなったら逃げてくれよ、目的はアンの救出なんだからこれで姉貴までやられたら洒落になんねぇ」
「え!私1人であの人を相手するの!?ムリだよぉ…あのエルフだって凄く強いってドロシーちゃんも知ってるでしょ!?」
「泣き事禁止!女には負けるって分かっててもやらなきゃなならない時があんの!それじゃ頼んだよ!」
オドオドする1人を残して活発そうな方の魔族がシグマさんへと襲いかかる。こうして2対2の戦いが幕を開けた。