223 ドラゴンの胆汁
「ちょっ…何考えてんのよ!?そんな匂いがするモノ飲める訳ないでしょ!?臭っ!生臭っ!」
レイからドラゴンの胆汁が入った壺を受け取ったオウルさんが笑顔でミノムシ状態のアンへと歩み寄る。必死に身体をくねらせて逃げようとしているが無駄な足掻きだ。
「そう言えばむかーし酔っ払った勢いで匂いが消えてないドラゴンの胆汁を飲んだ爺さんがいたな…アレを飲んでしまったら最期、その爺さんは死ぬまで身体から悪臭を放ち続け1人孤独に死んでいっちまった」
遠い目をしたシグマさんがポツリと呟く。アレを飲んでしまったら身体からもこの悪臭が放たれる様になるのか…なんて恐ろしい。
「身体からあんな臭いがしたら女として…いや人として終わり。可哀想な魔族の子、アーメン」
「アイギスちゃんの言う通りこんな臭いがする身体になったら私は生きていける気がしません…ユイトさん、もし私がドラゴンの胆汁を飲んでしまっても一緒にいてくれますか?」
「…努力はする、でも正直密室で2人きりになったりしたら…いや、これ以上は考えない様にしよう。頼むから皆今後ドラゴンの胆汁を飲むなんて真似はしないでくれ」
「モチロンだよ、ボクは皆より嗅覚が鋭いから鼻を塞いでいてもちょっと気持ち悪くなってきた…あんなモノを口にするなんて事は死んでもしない、約束するよ」
もしサクヤ達の誰かがアレを飲んでしまったらと考えるだけで恐ろしい。男の俺だって身体からあんな臭いがしたら人目につかない場所で1人ひっそりと暮らす人生を選ぶだろう。
「ほらほら、コレを飲んでしまったら君の女としての人生は終了だ。いくら可憐な容姿でもこんな体臭になってしまったらねぇ?」
「やめなさいよこの鬼畜エルフ!なんでこんな恐ろしい事を思いつけるのよ!?エルフって知的で温和な種族じゃ無かったの!?」
モゾモゾと必死に抵抗しようとするアンに一歩、また一歩とオウルさんが近づいていく。彼女は今さぞかし恐ろしい思いをしているだろう、ちょっとだけ同情してしまう。
「あーオウルの野郎楽しんでやがるな…あいつの本性は根っからのドSだからよ。あの魔族の嬢ちゃんも災難だな」
「僕は君の仲間に危うく家族や仲間を攫われかけた事があってね。その件もあって魔族のキミに同情するつもりは無い、コレが最期のチャンスだ。君の知っている情報を教えてくれないかい?」
ニコニコと爽やかな笑顔でオウルさんが語りかける。今後この人を決して怒らせない様にしよう、何をされるか分かったもんじゃない。
「分かった!分かったから!何でも話すからその臭いのをしまって頂戴!いやしまって下さい!」