215 裸の語らい
「あ~生き返る…天国はここにあったんだ…」
「大袈裟なヤツだな、でも温泉が最高って意見には賛成だ。これで酒でもあれば言う事なんだけどな、キンキンに冷やしたエールをこうクイッとやりたくなるぜ」
本日の訓練を終えてクタクタになっている俺を見かねたシグマさんとオウルさんに連れられ俺は例の温泉へとやって来た。女性陣は入浴を済ませていた為現在は男3人で貸切状態になっている。
「酒が飲みたいのは僕も一緒だけど流石にマズい。君は忘れてるかも知れないけどここは世界でも有数の危険地帯なんだよ?」
「んなこたぁ分かってるよ、ちょっと言ってみただけだ。流石の俺でもこんな場所で酔っ払うなんてバカはやらねぇよ」
「本当かい?大体シグマは昔から後先考えないと言うか何も考えずに動くって言うか…何度危険な目に遭わされたか数えきれないよ」
肩まで湯に浸かったオウルさんが深く溜息をついた。猪突猛進なシグマさんと思慮深いオウルさん、絵に描いたような凸凹コンビだ。
「2人は長い付き合いなんですね、昔同じパーティにいたって話はラッカさんからちょっとだけ聴きましたけど」
「そうだね、僕と姉さんとシグマは昔パーティを組んであちこち冒険に出かけていたんだ。もう30年前の話だけどね」
「そんなに昔だったか?確かカッパーの小僧が俺達にくっついて来たのが最後の旅だったな。この前王都で偶然アイツに会ったけどすっかりオッさんになってた、話しかけられた時誰だか最初わかんなかったぜ」
「シグマも僕達エルフと同じで長命な種族だから時間の感覚が曖昧になるのは仕方ないよ。僕がストークと結婚したのを機に解散したから間違いない、今年で結婚30周年なんだ」
シグマさんも普通の人間とは歳の取り方が違うのか、一体今何歳くらいなんだろうか。大雑把な人だから自分の歳なんて数えてなさそうだ。
「カッパーさんも一緒に旅をしていたんですね、前にお世話になった事があります」
「ユイトも面識があったのか、今のアイツは太ってしまってどこにでもいる様なオッさんだけど当時は今では考えられない様な美少年でな。行く先々の村や街で女に追いかけ回されてたぜ」
「懐かしいね、いきなり僕達に弟子入りさせてくれなんて言って来た時は驚いたよ。まるで今のレイと一緒だ」
「姫ちゃんの時はどうしようかと思ったぜ、勝手に連れていけば下手すりゃ誘拐犯だ。あんなお転婆でもこの国の王女様だからな」
その気持ちは俺にも分かる、昨日間違って裸にさせてしまった女の子が王女だと知った時には冷や汗が出てしまった。そう言えば何故レイは王立学院を抜け出してこの2人に付いて来たのだろうか。