213 王女の指導
「それでは今日からよろしくお願いします、レイ先生」
「もう!先生はやめて下さい、呼び捨てで結構ですわ。恥ずかしくなってしまいます」
レイに剣術の基礎を教えてもらう事になった俺はレイと2人きりでシグマさん達の野営地近くにある河原へと来ていた。
「それよりユイトは本当に私なんかが指導役で良かったのですか?今からでも街へ戻り他の人間を探した方が…」
「いや、昨日レイの構えを見た時に綺麗な構えだと思ったんだ、それに今俺が知りたいのはあくまで剣術の基礎の部分だ。俺は他の誰かじゃなくレイに剣術を教わりたい、君じゃなきゃダメなんだ」
レイの手を握り瞳を見つめる。するとレイの顔が真っ赤に染まってしまった、調子でも悪いのだろうか。
「そそそそ、そこまで言われたら教えない訳にはいきませんわ。そ…それより手を離して下さい、婚前前の男女が肌を触れ合わせるのは好ましくありませんわ!」
「あぁごめん。つい必死になってしまって、嫌な思いをさせて悪かったな」
「別に嫌ではありませんでしたけど…」
何か聞こえた様な気がしたが気のせいだったか。手を離されたレイはそそくさと自分の荷物に駆け寄り一本の細剣を持って来た。
「ユイトも自分の剣を抜いて下さい。まずは剣の握り方から確認しましょう、基礎中の基礎ですわ」
「わかった、レイの細剣とは随分勝手が違うけど大丈夫か?俺の獲物は…コイツだ」
腰の鞘から鬼神刀咲夜を抜き天に掲げる。この世界に来てから何度も俺の命を救ってくれた自慢の相棒だ。
「美しい片刃剣ですわね…見ていると吸い込まれそうになりますわ」
うっとりとした顔で咲夜の刀身を見つめるレイ、お世辞ではなく本当に咲夜に見とれているみたいだな。
「…つい見とれてしまいました、片刃剣の扱いも学院で学んでいるので大丈夫ですわ。ちょっと構えてもらえますか?」
「普段通りだと…こんな感じかな?おかしいところがあったら教えてくれ」
咲夜を正面に構える。今まで自分の構え方がおかしいかなんて考えた事が無かった、剣術を知る者の目からはどう見えるのだろうか。
「そうですわね…少し握りがおかしな気がします。人差し指を軽く鍔に当てる感じで、後は刃に近い方の指の力を少し抜いてみてもらえますか?」
「こうか?なんだか少し持ちにくい様な気がするんだけど」
「最初は皆そうですわ。その状態で軽く素振りをしてみて下さい、いつもより振りやすいと思います」
レイに言われた通りの握り方で咲夜を振る。驚いた、いつもよりも剣速が速くなっている。
「握り方ひとつ違うだけでもこんなに変わるんだな、ありがとうレイ」
「お礼なんていりませんわ。こんなのはまだまだ序の口、ビシバシいきますわよ」




