204 人外
シグマさんとレッドドラゴンが戦っていると思われる地点。その上空から地上を見下ろした俺の目には理解し難い光景が飛び込んで来た。
「マジかよ…本当に1人でレッドドラゴンを倒してしまうなんて…」
地にひれ伏す巨大な赤い竜。その頭の上には勝ち誇る様に立っている1人の男がいた。
「誰だ!?空から覗いているヤツは!?魔族のヤロウか!?」
「待って下さい!俺は貴方の敵じゃありません!今そちらへ行きます!」
何故この距離で上空にいる俺の存在に気づけたのだろうか。このまま敵だと思われて攻撃されたらたまったもんじゃない。俺は慌ててシグマさんのいる場所へと降り立った。
「何者だお前さん?見た感じ普通の人間みてぇだが空を飛んでいたしな…魔族じゃないのは確かみたいだが」
訝しげに俺を観察してくる中年の男性。服の上からでもその身体が鍛えられている事が分かる、しかし最も目を引くのは彼の頭に付いているあるモノだ。
「あぁコレか?心配しなくても俺は魔族じゃない。まぁ普通の人間ってワケでもないんだけどな」
俺の視線に気づいたのかシグマさんは自分の頭のに生えている二本の角を撫で回した。確かに今まで出会った魔族に生えていた角とは形が違う。
「まさか…鬼?なんですか?」
「おっ!物知りだな少年、その年で俺達鬼族のことを知ってるなんて学者さんか何かかい?それにしては随分と鍛えているみたいだが」
シグマさんの頭から生えている角は俺の良く知る形をしていた。鬼神化した時に俺の頭に生える角にそっくりだ。
「俺の名前はユイトって言います。王都グランズから貴方達を追いかけてきました」
「お前さんがユイトか!?ラオンの旦那の手紙を読んでから早く会いたいと思ってたぜ!そうかそうか!いゃあ会えて良かった、俺はシグマ、よろしくな!」
シグマさんがバンバンと俺の背中を叩きながら笑い声をあげる。見た目通り豪快な人の様だ。
「なんでも俺に修行を付けて欲しいって話だったがそれは明日からにしよう。今日はレッドドラゴンも狩れた事だしお前さんの歓迎会をやろうぜ、ドラゴンの肉は食った事あるか?」
「ありがとうございます、ドラゴンの肉なんて食べた事ありません。美味しいんですか?」
「ドラゴンを食った事が無いなんて人生の8割は損してるぜ。亜竜の肉は臭くて食えたモンじゃないけど本物のドラゴンになると話は別だ、一度口にしたら暫くは夢に出る程に美味い。腹一杯食わせてやるから楽しみにしとけ」