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197 裸体

「メリッサ、アンタまた胸が大きくなったんじゃない?ちょっと触らせてよ」


「そんな事無いわよ。テミスちゃんこそ本当にスタイルがいいわね、羨ましいわ」


「胸の話は禁止。悲しい気持ちになる人がいる事も考慮するべき」


温泉から楽しそうな声が聞こえてくる。一方俺は1人でせっせと野営の準備中だ。今日はここで野営しゆっくりと温泉を楽しもう。


「全くアイツらは俺の事を男として意識してないんじゃないか?年頃の娘が恥じらいも無く…」


ブツブツと独り言を呟きながら作業を進める。煩悩を捨てるのだ、その時背後の茂みから人の気配を感じた。誰かが温泉から上がったのだろうか。


「早かったな、もっとゆっくり浸かっても良かったのに。もうすぐ野営の準備も終わるから火照った身体を冷ましていればいい。何か飲み物を出そうか?」


振り向いた俺の目に飛び込んで来たのは一糸纏わぬ姿の少女。しかしこの少女は…


「えっと…どちら様でしたかね?ハハハハハ…」


「キャアアアアアアア!!!」


静かな山に響き渡る見知らぬ少女の悲鳴。マズい、これはマズい、なんでこんな場所に裸の女の子がいるのかわからないが客観的に見れば俺が裸の女の子を襲おうとしている様に見られてしまう。


「ゴメン!後ろを向いてるから早く着るものを!」


「変態!この強姦魔!なんでこんな場所に覗き魔がいるんですの!?」


「見てない!何も見てないから!俺だってこんな場所に君みたいな女の子がいるなんて思ってなかったんだ!しかも裸で!」


背後から聞こえる衣擦れの音。酷い言われようだが実際に見てしまったんだからしょうがない、ご馳走様です。


「ふふふ…何故私が裸でいるってご存知ですの?いいですわ、私が答えて差し上げましょう。それは貴方が私の裸を見たからに違いありませんわ!」


「見てないって!それよりもう振り向いても大丈夫か?」


「いいえ、まだそのまま動く事を許しませんわ。一撃で仕留めて差し上げますから!」


なにか物騒な言葉が聞こえた気がした。同時に狩猟神の耳飾りから警告が発せられる。


「!?危ないじゃないか!?何を考えているんだ!?」


「私の一撃を避けた?それも後ろを向いたまま。偶然ですわね、次こそは当てますわ。覚悟なさい!」


「だからなんでいきなり切り掛かるんだよ!?木の枝とは言え当たったらかなり痛いぞ!?」


背後からの攻撃を避け振り返った俺の目には木の枝を剣の様に構えた少女の姿が入ってきた。気が強そうだが気品を感じる整った顔立ち、肩まで伸びたブロンドの髪はまるで極上のシルクの様だ。


「大丈夫ですわ。痛みを感じない様に一撃で貴方の記憶を刈り取って差し上げます。私の裸を見た貴方の記憶を綺麗さっぱりと!覚悟なさい!」

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