193 疾風迅雷
テミスの声を聴いて皆が臨戦態勢になる、遠くから聞こえてくる不気味な鳴き声が段々と近づく、数匹規模の群ではなさそうだ。
「サクヤ、灯りが欲しい、周囲を鬼火で照らしてくれないか?」
「わかりました、新技を試す良い機会です、鬼火肆式!!」
サクヤが放った火球がある程度上昇したところで動きを止め周囲を照らす、これで視界は確保出来た。
「便利な技だな、助かったよ、夜に襲ってくるって事は相手は暗闇でも敵を捕捉できる術があるだろうからな、これで条件は五分になった」
「来たわよ…何アレ?さっきみた死骸とは少し違うみたいだけど?」
テミスの指さす方を見ると無数のモンスターが鬼火に照らされていた、目が大きく爬虫類の様な姿をしたモンスターで体躯は2~3メートル程ある。
「凄い数だな、作戦はさっき決めた通りだ、ルメス、行けるか?」
「任せてよ、ボクが動きを止めるからトドメはヨロシクね、それじゃ行ってきます、疾風迅雷!!!」
「おい!ちょっと待て!ったくしょうがないヤツだな」
ルメスがモンスターの群れに単身飛び込んで行ってしまった、目にも見えないスピードだ、慌てて俺も後を追うがモンスターの様子がおかしい。
「なんだこれは?痙攣しているのか?」
「へへっ、これがボクの能力疾風迅雷と雷掌だよ、びっくりした?」
「うわっ!いつの間に俺の背後に?一体どんな技なんだ?」
「疾風迅雷は全身に雷を纏っての高速移動、雷掌は触れた相手に高電圧の電流を流し込む技だよ、このモンスターみたいに硬い鱗に覆われている敵には致命傷を与える事は難しいけど行動不能にするくらいならお手の物さ」
突然背後に現れたルメスが全身にパチパチと雷を纏いながら話しかけて来た、これは凄い能力だ、殺傷力は強くない様だがそれは仲間である俺達が補えば良い。
「正直ここまでやるとは思ってなかったよ、これで俺達の戦い方の幅が広がる」
「へへっ、やっぱりユイトに褒められると嬉しいな…って敵はまだ残ってるんだった」
「話の続きはコイツらを片付けた後にしよう…皆!行動不能になった敵は任せた!俺とルメスは奥に突っ込む!」
サクヤ達なら行動不能になった敵にとどめを刺す事は簡単だろう、俺はルメスと敵陣の奥で暴れ回るとするか、安眠を妨害された怨みは怖いのだ。
「ユイト、どっちが多く敵を倒せたか競争しない?」
「乗った、ルメスは行動不能にした数でいいぞ、もし俺に勝てたら何かご褒美をやるよ」
「えっ!それじゃ頭を撫でて欲しいな…絶対だよ!約束したからね!」