019 魔核崩壊
ドラゴニュートの首が宙を舞う。
「母さん…安らかに…ありがとう」
アルフさんは消え入る様な声で呟くとその場に崩れ落ちた。
俺も鬼神化を解除する、身体からスッとサクヤの力が抜けるのを感じる、すると目の前に光が集まり光の中からサクヤが姿をあらわした。
同時に俺の全身を襲う鈍い痛み、短時間とはいえ身体を100倍の能力値で動かした代償だ、今の俺ではまだ完全に鬼神降臨を使いこなせない。
「ユイトさん!大丈夫ですか!」
サクヤが倒れかけた俺の体を抱き支える。
「あぁ…歩けない程じゃない、早く脱出しないと」
「大丈夫かユイト?もう時間が無い、急いで出口に向かおう」
満身創痍のアルフさんに肩を貸してガンマさんが近づいてきた、ガンマさんも足を引きずっている、足の傷はまだ完全に治って無い様だ。
「このままじゃ間に合わない…僕を置いて先に行け、この体じゃ足手まといになる…」
『パーン』
アルフさんの頬を平手で打つ音が響く。
「ふざけないで!確かに私は昔貴方に『わがままに生きろ』って言ったわ!でも今のワガママは聞けない、私は貴方よりワガママなのよ、貴方と一緒に生きていきたいの!」
目に涙を浮かべイオタさんがアルフさんの顔を睨む。
「そうだぜ大将、最後まで足掻いてみようや」
ガンマさんは笑いながら諭すように語りかけている。
「…?何か来ます!奥から!すっごく魔力が高まっています!」
サクヤが魔力の周囲の魔力の変化を察知して叫ぶ、魔核の崩壊が始まった様だ。
「くそっ!思ったよりあのトカゲ野郎に時間をとられたみたいだ!大将!いけるか!?」
「あぁ!這ってでも進もう!少しでも出口に近づくんだ!」
ダメだ、出口まではまだ少し距離がある、とても間に合いそうにない、一か八かだ、俺は左手に装着しているアイギスを見つめる。
『主さま、会いたかった、大丈夫、私を信じて』
アイギスから声が聞こえる、奥からは地を鳴らす様な音が響いてきた、迷っている時間はない。
「皆!俺の後ろに集まって下さい!早く!」
「ユイト君何を考えて…?いや、僕は君を信じるよ」
アルフさんは俺の目を真っ直ぐに見つめてくる
「お前に賭けるぜ、損させるなよ?」
おどけてみせるガンマさん。
「頼むわよ、ユイト君」
イオタさんは優しい顔でアルフさんの手を握りしめる。
「私は何があっても、ずーっとユイトさんといっしよです」
「あぁ、ずっと一緒だ、サクヤ」
俺の後ろに皆が集まる、俺は仲間達を…愛する人達を守りたい。
「【イージス】」




