192 夜襲
「よし、これでテントの設営はOKだ、最初に比べると半分以下の時間で設営出来るようになってきたな」
「お疲れ様ユイト君、今晩の見張りは私のとテミスちゃんが担当するわ、昨日は見張りで疲れてるでしょ?ゆっくりと休んでね」
「お願いするよ、少しでも異変を感じたら遠慮せずに起こしてくれ、街での生活と違って野宿ではちょっとした油断が命取りになるからな」
一歩街の外に出るとモンスターが跳梁跋扈するこの世界での野宿はアウトドアなんて生温いモノでは無い、更にアイロンスティールの時の様に野盗や山賊などのならず者が襲って来る可能性も有る、まさにサバイバルだ。
「まかせなさいって、私の気配探知を掻い潜れるヤツなんてそうそう居ないわ、アンタは疲れを癒して頂戴」
テミスとメリッサの言葉に甘え夕食を摂った後俺はすぐに横になった、昨晩の睡眠不足と旅の疲れのせいかすぐに意識がまどろんでくる、一旦俺の記憶はそこで途切れた。
「…きて…起きて…ユイト!起きてったら!」
「んあ?テミスか…あと5分眠らせてくれ…」
どれだけ眠れただろうか、何か夢を見ていた様な気もするがどうだっていい、俺は眠いのだ、辺りはまだ暗い様だしもう少し寝ても問題ないだろう。
「もう!何をテンプレな寝ぼけ方をしてるのよ!敵襲よ、モンスターが近づいて来てるわ!」
パシンとテミスのビンタが頬に炸裂する、敵襲と云う言葉とのダブルパンチでようやく意識を覚醒する事が出来た。
「おはよう…何というかその…すみませんでした」
「そんな事は後でいいから!早く戦いの準備をして頂戴!もう近いわよ!」
辺りを見ると俺以外の皆はすっかり戦闘態勢になっていた、面目無い、カッコつけて偉そうな事を言ったのにこのザマだ。
「おはよう主さま、陣形はどうするの?」
「サクヤとテミスは後ろから援護を、メリッサは万が一に備えて力を温存しておいてくれ、ルメスは…」
「ボクはユイトと一緒に前衛じゃダメかな?せっかくもらったコレの力も試してみたいしさ」
ルメスが胸元に輝く七星核の首飾りを見せてくる、嵌められた紫の宝石の属性は雷、グランズを発つ前に鑑定した結果分かったルメスの得意属性だ。
「わかった、ただし無理はするなよ、少しでも危ないと思ったら下がってアイギスのシールドに逃げ込むんだ」
「約束するよ、でもボクを甘く見ないで欲しいな、皆にはカッコ悪いところしか見られてないからしょうがないけど…」
きっとトーラに刺された時の事を気にしているのだろう、ルメスがポリポリと恥ずかしそうに頬を掻く。
「おしゃべりはここまで!来るわよ!全員気を引き締めて!」