191 最強の片鱗
辺りに散らばる夥しい数のモンスターの死骸、見るからに強力そうな爬虫類の様な姿さたモンスターだ。
「シグマさん達は3人でドラゴンロックを目指したと云う話だったわ、ユイト君はこれがたった3人の仕業だと考えるのかしら?」
「あぁ、この切り口を見てくれ、鱗の薄い所を的確に狙い一閃で仕留めている…技量の高さが伺えるよ」
「凄いわね…流石はラッカさんが最強と呼ぶだけの事はあるわ、それに眉間を射抜かれてる死体も全部1発で射抜かれているわよ、パフィン村のエルフ達も弓を使っていたからこれはきっとオウルさんの仕業ね」
「ガルくんとカナリーちゃんのお父さんですね、きっとパフィン村の皆も元気にしていた事を知れば喜びます、早く会ってお話がしたいです」
「そうだな、これでシグマさん達もドラゴンロックに辿り着いている事が分かった、とは言っても俺達より大分先へ進んでいるみたいだけど」
モンスターの死骸はここ1、2日で出来た物ではなさそうだ、腐乱の状態から少なくとも1週間は経過しているだろう。
「うぷっ…主さま、なんだか気持ち悪くなってきた、早くここを離れるべき」
「アイギスの言う通りあんまりここに長居しているど皆体調を崩しちゃうよ、早く今夜の野営地を探しに行こう」
「確かに気分の良い場所じゃ無いな、サクヤ、この辺りに散らばる死骸を燃やし尽くす事は出来るか?」
ドラゴンロックには滅多に人が寄り付かないとは聞いたがこのまま死骸を放置するのは衛生的にかなり良くない、汚物は消毒だと昔読んだ漫画でも火炎放射器を持った男が言ってたし燃やし尽くせば大丈夫だろう。
「わかりました、私の後ろにいて下さいね、鬼火弐式!!」
無数の小さな火球がモンスターの死骸に降り注ぐ、炎は一瞬で死骸を燃やし尽くし辺りには肉の焼けた独特の匂いが充満した。
「はい、これでお終いです、なんだかお肉が食べたくなりました、今夜の夕食はステーキにしましょう!」
「サクヤ、私たまにアンタの感覚が分からなくなるわ、それ本気で言ってる?」
「流石にそれは無い、ひくわー」
「ごめんなさいねサクヤちゃん、私もちょっと今日はお肉の気分じゃないかなーって…」
「ボクも今日は晩御飯少なめにしておくよ、その…明日からは厳しい登山になるだろうし食べ過ぎてお腹を壊したら大変だ」
サクヤの提案を他の皆がやんわりと却下する、因みに俺もさっきの光景を目の当たりににして普通に食事が出来る様な図太い神経は持っていない、他の皆がまともな感覚でいてくれて助かった。
「あれ?皆どうしちゃったんですか?体調が悪いならお肉はまた今度にしましょう、身体が弱っている時は消化に良い物がいいらしいです…お粥?いやスープの方が良いですかね…」
俺達の気持ちを他所にサクヤが夕食の献立を考え始めた、明日からの登山を考えるとサクヤの様に如何なる時も食事を取れる図太い神経はある意味凄い才能なのだと思ってしまう。