189 山へ
「ん~良く寝ました、気持ちの良い朝です」
サクヤが背伸びをしながらテントから出てきた、王都グランズを出発して数週間、俺達はドラゴンロックへ向かう古い街道の道端で野営を行い朝を迎えた。
「おはようサクヤ、今お茶を淹れるよ、他の皆はまだねているのか?」
「私が淹れます、ユイトさんは見張り当番で疲れてるでしょうし、皆はまだ寝ています、まだ野営に身体が慣れていないんでしょうね」
「メリッサとルメスは街での生活しか知らなかったから無理もない、サクヤもまだ寝ていていいんだぞ」
「大丈夫です、皆が起きる前に朝食の準備をはじめちゃいます、ユイトさんはゆっくりしていて下さい」
サクヤの言葉に甘え俺は少しだけ横になる事にした、至れり尽くせりのバルメス邸での生活から急にテントでの野営生活に変わってしまい日に日に皆が消耗していくのが分かる、テントや寝袋等の野営道具は金に糸目を付けずに最高級の物を揃えたがそれでも疲労は溜まるのだ。
「主さま、起きて、サクヤが朝ごはん出来たって」
ついウトウトしてしまった、アイギスに肩を揺すられて目を覚ますと他の皆も目を覚ました様で朝食の準備を手伝っていた、辺りには食欲を刺激する匂いが漂っている。
「おはようユイト、はい、これがあんたの分よ、もうすぐ玉子焼きが出来るから持ってくるわね」
「ありがとうテミス、今日のメニューは玉子焼きとシチューか、美味しそうだな」
「今日のシチューは私達も手伝ったのよ、愛情たっぷりだから熱い内に食べちゃってね、はい、アーンしてユイト君」
メリッサがスプーンを俺の口に運ぼうとするのを制止しシチューを口に運ぶ、優しい甘さがなんとも言えない、朝食にぴったりな味付けだ。
「やっぱりサクヤは料理が上手いね、サクヤの言う通りに作ったらボク達でもこんなに美味しいシチューが作れちゃうんだから、もう一杯食べたいな、お代わりしてくるよ」
「あんまり腹一杯になったら後がキツイぞ、今日中にはドラゴンロックの麓に到着する、何が起こるかわからないからすぐ動ける様にしておくんだ」
「チェッ、ユイトのケチ、でもようやく辿り着いたんだね、これがドラゴンロックか…」
朝靄の中ルメスの見つめる先には薄っすらと巨大な岩山が輪郭を表していた、これが今回の目的地ドラゴンロックだ、良く見ると山の上の方に何かが飛んでいるのを確認できた、アレがドラゴンだろうか。
「竜の棲む山か…ここに俺の最後の装備がある、それに最強と呼ばれる男も、この山で力を付け必ず偽神の計画を阻止してやる」




