186 街の復興
「バカヤロウ!そっちの柱はまだ打ち付けるんじゃねぇ!順番ってモノを考えねぇかこのウスラトンカチ!」
グランズの城下町にライノさんの怒号が鳴り響く、流石は頑固職人、こっちまで怒られている気分になる程の迫力だ。
「精が出ますね、燃えてしまった店を自分達の手で再建するって聞いた時は驚きましたよ」
「おぉっ!ユイトさん達じゃねぇですかい!恥ずかしい所をお見せしやしたな、今日は一体どうしたんで?」
「近々王都を離れる事になったんでご挨拶に来ました、良かったら皆さんで召し上がって下さい、サクヤの手作りですが味は保証付きです」
俺はアイテムバックの中に収納していたサクヤお手製の特大ピザを数枚取り出す、アイテムバックの中に収納された物は時間の経過による影響を受けない為熱々の出来立てだ。
「こいつぁご丁寧にありがとうごぜぇます、おい!野郎共!手を止めてこっちに来い!ユイトさん達から差し入れを頂いたぞ!」
ピザの匂いにつられる様にライノさんの弟子のドワーフ達が次々と集まって来た、朝から大工仕事をしていたのか皆腹ペコの様だ、貪る様に大量のピザを胃袋に詰め込んでいく。
「テメェ2切れも食ってんじゃねぇ!その鳥肉の乗ったのは俺はまだ食ってねぇんだぞ!」
「お前こそ俺の分のエビが乗ったピザを食ったじゃねぇか!俺はエビが好物だって知ってるクセに!」
「いい加減にしやがれ!お客人の前で見っともない事するんじゃねぇ!」
ピザを取り合っていた弟子達がライノさんに叱り飛ばされる、気に入ってもらえるか不安だったがドワーフ達の舌にも無事ピザは受け入れられた様だ。
「こんなに喜んで貰えると作った甲斐があります、まだまだおかわりはあるんで喧嘩しないで下さいね」
「サクヤさんがこんなに料理が上手いとは知りやせんでした、しかしこのピザって料理はついつい酒が飲みたくなりやすなぁ」
ガハハと豪快に笑うライノさん、やはりそう来たか、こんな事もあろうかと準備していた秘蔵の酒をアイテムバックから取り出すとドワーフ達は食い入る様に酒を見つめる。
「こっ!これはまさか幻の銘酒、鳳凰の涙!?それにこっちのワインはブラーゴ産の30年モノ…なんてこった!伝説級の銘酒が勢ぞろいだ!」
これらの酒は俺を晒し者にした罰としてペーギさんがラッカさんから取り上げだ物だ、最後の方は本気で泣きながら俺に縋り付いて来たが俺が受けた心の傷は深い、この程度で許してあげたのだから寧ろ感謝して欲しいくらいだ。