018 鬼神降臨
「サクヤ、行くぞ、アイツをぶっ飛ばす」
「はい、2人でぶっ飛ばしましょう」
頭の中に声が聞こえる。
良く知っている声だ、VRMMOで何度も経験した新たなスキルを習得した事をプレイヤーに知らせる機械音声のアナウンス。
『新しいスキル【鬼神降臨】を習得しました』
VRMMO最凶最悪のガチャ装備『鬼神刀咲夜』その真の力が俺の物となった事を告げる無機質な声、いける、身体がスキルを理解している。
「「鬼神降臨!!」」
身体にサクヤが…鬼神の力が入ってくる、左眼が炎の様に紅く染まっていく、頭には紅と蒼のオーラが凝縮された様な角が2本生え揃う、俺はサクヤと1つになった。
しん、とあれだけ五月蝿く喚いていたドラゴニュートの声が消える、否、時が停まったのだ、身体が熱い、熱くて堪らない、しかし頭は最高に冴え渡っている。
『聞こえますか!ユイトさん!』
どこからかサクヤの声が聴こえて来て世界は時間を取り戻す。
「あぁ…大丈夫だ、サクヤ」
「なんだぁ…このサルがっ!?ヒッ?!何だお前!その姿は何だっ!来るなっ!こっちに来るなっ!」
先程まで悦に浸っていたドラゴニュートが俺を見ている、酷く怯えているようだ、モンスターの本能が危険を感じとったのだろう。
『後1分くらいで鬼神化が解けます、イケますか?』
「わかって聴いてるだろ?充分過ぎる」
俺は一歩ドラゴニュートへ歩を進める。
「辞めろっ!来るなっ!来るなって言ってんだろっ!!」
ドラゴニュートが足元に落ちていた鬼神刀咲夜を拾いアルフさんの首に刃を突き立てる。
「来るなっ!死ぬぞ!コイツが死ぬぞ!」
「お前に幾つか教えてやる、まず1つ、課金装備は譲渡、破壊不可能だ」
ドラゴニュートの手に握られた咲夜が姿を消し、次の瞬間俺の右手に握られていた。
「どうなってやがる!!何だ何でだ!」
「2つ目、お前は全くアイギスを使いこなせていない、豚に真珠だ」
再び世界が時を止める、ドラゴニュートに接近しアルフさんを掴んでいる腕を斬り飛ばしアルフさんを救出する。
「ユ…ユイト君?その姿は…それにいつの間に?」
「?!ガァァァァッ!!腕が!俺の腕がァァァ?!いつの間に斬りやがった?イデェェ、いてぇよ"ぉぁぉ」
ドラゴニュートはうずくまりアイギスを装備している残された腕を突き出そうとする、が。
「これは補足だ、お前の腕はもう2本ともない」
俺は斬り取ったヤツの腕から神甲アイギスを外し自分の左腕に嵌める、その瞬間アイギスが俺の腕に合わせたサイズに変わり装着された、飾り気の無い無骨なフォルム、銀色に輝く最硬の防具、間違いない、これはVRMMOで俺が使っていた神甲アイギスだ。
「何だヨォォォァ!!!何でだヨォァ!?俺はぁぁぁ下等生物にぃ復讐しでるだけだろぉぉぁう!!」
「最後に訂正だけどお前は被害者じゃない、加害者だ、復讐される事を覚悟するべきだと思う」
地面に這いつくばったヤツの横には治療の終わったガンマさんとイオタさんに支えられたアルフさんがいた。
アルフさんに目で合図を送ると無言で頷いた。
「ファング…スラッシュ!!!」
ドラゴニュートの首に鈍色の剣が振り下ろされた。